肉牛価格は一貫して下落傾向
肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2022年末から一貫して下落傾向が続き、23年5月30日時点で1キログラム当たり584豪セント(544円:1豪ドル=93.07円
(注1)、前年同日比47.4%安)と過去5カ年平均を下回って推移している(図1)。
現地報道によると、牛群再構築が完了し、牧草肥育業者の需要が落ち着いたことが価格下落の一因であるとしている。一方、豪州フィードロット協会(ALFA)と豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、23年3月末のフィードロット収容可能頭数は155万5505頭(前年同期比4.7%増)と過去最高を更新しており
(注2)、穀物肥育業者からの需要は継続するとみられる。
また、オランダの農協系金融機関ラボバンクによると、23年のEYCIの平均価格は22年の平均を30%下回る同700〜800豪セント(651〜745円)の範囲になると予想している。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年5月末TTS相場。
(注2)海外情報「2023年3月末フィードロット収容可能頭数、過去最高を更新(豪州)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003524.html)を参照されたい。
今後の気象予報、エルニーニョ現象の可能性を示唆
豪州気象局(BOM)は5月23日、最新のエルニーニョおよびラニーニャ現象の発生見通しを公表し、エルニーニョ現象の発生確率が監視レベルにあるとしている(図2)。BOMによる過去の例を見ると、本見通しが監視レベルの場合、その後の現象の発生確率は約50%となっている。現地報道によると、(エルニーニョ現象は干ばつにもつながることから)牧草肥育肉牛農家から懸念の声が聞かれるとしている。
牛肉輸出量は前年同期比2割増、中国向けが大幅増で首位浮上
2023年4月は、祝日の並びから前年より食肉処理施設の稼働日数が少なかったにもかかわらず、同月の成牛と畜頭数は前年同月比で平均2割以上増加した(図3)。
また、牛肉輸出量も堅調に増加し、豪州農林水産省(DAFF)によると、同月の牛肉輸出量は7万2063トン(前年同月比16.8%増)、同年1〜4月の累計でも29万2891トン(前年同期比22.6%増)と、いずれも大幅に増加している(表)。
輸出先別では、中国向けが1万6745トン(前年同月比42.8%増)と約1.4倍に増加し、これまで首位にあった日本向けを抜いて最多の輸出先となった。この要因について現地報道は、旧正月後の在庫不足のほか、2月にブラジルで検出された非定型BSEによりブラジル産牛肉の輸入が3月23日に再開したものの、その後も同国産牛肉輸入量は大きく回復していないことから、4月は豪州産牛肉への需要が高まったためとしている。そのほか、日本、韓国、米国向けなど主要輸出先も軒並み輸出量が増加した。
また、豪英FTAが5月31日に発効し、豪州産牛肉は無税の関税割当を受けたことで、今後、英国向け輸出がどの程度拡大するのか注目されている
(注3)。
(注3)海外情報「豪英FTAおよびNZ英FTAが5月31日に発効(その2:豪州およびニュージーランド側の反応)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003535.html)を参照されたい。
(調査情報部 国際調査グループ)