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海外需給動向【豚肉/EU】畜産の情報 2023年7月号

価格上昇により豚肉輸出量が大幅減少

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23年2月の豚肉生産量、すべての主要生産国で減産
 欧州委員会によると、2023年2月の豚肉生産量(EU27カ国)は、166万9000トン(前年同月比10.9%減)とかなりの程度減少した(図1)。同月の1頭当たり枝肉重量は95.0キログラムと前年並みであったが、と畜頭数が1757万頭(同10.9%減)とかなりの程度減少したことが影響した。
 国別に見ると、EU全体の約25%の豚肉を生産するスペインは同9.4%減、約20%を生産するドイツは同13.6%減、約10%を生産するフランスは同5.5%減と、上位3カ国をはじめすべての主要生産国で前年同月を下回った(表1)。
 23年の豚肉生産量について欧州委員会は、(1)22年12月時点の母豚の飼養頭数の減少(2)現時点でアフリカ豚熱の具体的な収束時期が見通せないこと(3)輸出先からの需要の減少―などから減少と見込んでいる(注1)

(注1)海外情報「22年のEU豚肉生産量は減少に転じる、23年も減少予測(EU)(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003517.html)」を参照されたい。



 
 
23年4月の枝肉価格、供給減を背景に記録的な高水準
 欧州委員会によると、2023年4月の豚枝肉卸売価格(EU27カ国)は、前年同月比24.9%高の100キログラム当たり238.29ユーロ(3万6110円:1ユーロ=151.54円(注2))となり、供給量の減少を背景に23年に入ってからも上昇を続けている(図2)。ただし、5月の週別価格を見ると、依然高止まりにあるものの前週比0.5%安〜0.0%と上昇基調は一服している。現地報道によると、欧州の北部・中央部の多くの地域で比較的涼しい気候となったことで、屋外調理(バーベキューなど)の需要が低迷していることが要因としている。


(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年5月末TTS相場。
 
23年3月の豚肉輸出量は大幅に減少
 欧州委員会によると、2023年3月のEU域外への豚肉輸出量(EU27カ国)は、21万2106トン(前年同月比16.1%減)と大幅に減少した(表2)。輸出先別では、首位である中国向けが同3.9%増とやや増加、第3位の英国向けが同10.5%増とかなりの程度増加したものの、第2位の日本向けは同11.9%減となるなど、ほとんどの主要輸出先で減少した。また、23年第1四半期(1〜3月)の輸出量では、首位の中国向けも前年同期比4.8%減となり、英国以外の主要輸出先はいずれも減少している。
 EUの豚肉価格は、主要豚肉輸出国である米国、カナダ、ブラジルの価格と比較すると大幅に上回っていることから、欧州委員会は、EU産豚肉の国際競争力の低下を懸念している。
 

(調査情報部 上村 照子)