22年の豚肉生産量、生産コスト上昇で前年比2.2%減
チリ農業省農業政策・調査局(ODEPA)によると、2022年の豚肉生産量は、57万6400トン(前年比2.2%減)と前年をわずかに下回り、3年ぶりに減少となった(図1)。また、1頭当たり平均枝肉重量
(注1)は、105.5キログラムと前年(106.2キログラム)より0.7%減少した。これは、輸入を中心とした飼料穀物価格が高水準で推移したことに加え、米ドルに対するチリペソ安により生産コストが上昇したことが要因とみられる。23年1〜3月の豚肉生産量は、飼料穀物価格が下落傾向となったことなどから14万3900トンと前年同期並みで推移している。
近年のチリの豚肉生産量は、豚総飼養頭数が伸び悩む一方で、養豚企業による繁殖成績や飼料要求率の改善、種豚の遺伝的改良など、生産の効率化や平均枝肉重量の増加により17年以降おおむね増加傾向で推移している。
(注1)枝肉重量には頭部と皮が含まれる。
22年の豚肉輸出量は2年連続で前年を下回る
2022年の豚肉輸出量(冷蔵・冷凍)
(注2)は、17万6938トン(前年比15.5%減)と前年をかなり大きく下回った(表、図2)。豚肉輸出量は20年まで3年連続で過去最高を更新したが、その後は2年連続で減少している。
輸出先別に見ると、中国、韓国、日本向けで全体の8割弱を占めている。最大の中国向けは、同国での豚飼養頭数の回復により豚肉需給が緩和した結果、7万4801トン(同42.6%減)と大幅に減少した。このため、韓国、日本向けのほかコロンビア、コスタリカ、ぺルー、メキシコといった中南米向けが前年を上回ったものの、中国向けの落ち込み分を補うには至らなかった。
23年1〜3月の豚肉輸出量は、5万7356トン(前年同期比47.5%増)と前年同期を大幅に上回った。最大の中国向けは、前年同期比76.3%増と大幅に回復した。これは、前年同期の輸出量が低調であったことや新型コロナウイルス感染症(COVID−19)対策の規制緩和の影響によるとみられる。また、これに次ぐ日本向けも同79.6%増と前年同期を大幅に上回った。
チリは23年2月21日、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)が発効し10番目の締結国となった。チリの食肉団体は、今後、TPP加盟国への豚肉の輸出拡大につながるとしている。
(注2)チリの豚肉輸出量は、ほとんどが冷凍品である。
23年の肉豚生産者販売価格は前年同月を上回る水準で推移
2022年の肉豚生産者販売価格は、国内経済の低迷による豚肉の需要の減少や中国向け輸出量の減少により、前年の高値から一転して前年比41.8%安の1キログラム当たり0.89米ドル(125円:1米ドル=140.77円
(注3))となった(図3)。生産者販売価格が低下する一方で、ウクライナ情勢、天候不順などによる飼料価格の上昇や世界的なインフレ圧力の増大による生産コストの上昇により、豚肉生産者にとっては厳しい経営環境となった。23年に入ってからは、前年同月を上回って推移しており、直近の23年4月の肉豚生産者販売価格は、同0.84米ドル(118円、前年同月比27.3%高)、1〜4月の平均でも同0.99米ドル(139円、同16.9%高)となった。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年5月末TTS相場。
(調査情報部 井田 俊二)