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海外需給動向【鶏肉/ブラジル】畜産の情報 2023年7月号

23年の鶏肉卸売価格は前年の高値から下落傾向で推移

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23年1〜4月の鶏肉輸出量は、前年同期比14.3%増
 ブラジル経済省貿易事務局(SECEX)によると、2023年1〜4月の鶏肉輸出量は161万4809トン(前年同期比14.3%増)と前年同期をかなり大きく上回った(表)。これは、為替相場が米ドルに対してレアル安となっていることに加え、世界各地で感染が確認されている高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)などの影響による供給減で、ブラジル産鶏肉の需要が高まったためとみられる。輸出単価は、前年同期比5.9%高の1トン当たり1899米ドル(26万7322円:1米ドル=140.77円(注1))となった。
 輸出先別に見ると、最大の中国向けは26万2782トン(同33.6%増)と前年を大幅に上回った。これは、同国政府が22年12月、COVID−19対策として実施していた国内外の移動制限や、輸入食品に対する検査や消毒などの実施を解除する方針を打ち出したことなどが要因である。
 22年に日本を抜いて第2位の輸出先となったアラブ首長国連邦(UAE)向けは12万6766トン(同22.8%減)と前年の反動で大幅に減少した。また、日本向けは13万9798トン(同8.7%増)と前年同期をかなりの程度上回り、再び中国に次ぐ輸出先となった。このほか、23年12月までインフレ対策として輸入関税の無税措置を講じているメキシコ向けは、6万9617トン(同19.4%増)と大幅に増加した。

(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年5月末TTS相場。

 
23年5月末の鶏肉卸売価格、前年同期の2割程度安
 サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、2023年のブラジルの鶏肉卸売価格(サンパウロ州、名目価格)は下落基調で始まり、2月初旬には1キログラム当たり6.60レアル(182円:1レアル=27.62円(注2))の安値を記録した(図)。その後、上昇に転じたが、3月下旬以降は再び下落している。直近の価格は同6.01レアル(166円、23年5月31日現在)で前年同日比21.7%安となっている。ブラジルでは、22/23年度のトウモロコシ、大豆生産はともに記録的な豊作が見込まれており、同国内の飼料穀物需給の緩和が価格低下の一要因とみられる。
 22年の鶏肉価格の動向を振り返ると、米国、アジア、EUなどで感染が確認されたHPAIなどにより鶏肉の国際需給がひっ迫したことに加え、飼料などの生産コスト上昇などを反映し、3月に入り高騰した。鶏肉卸売価格は、4月に同8レアル(221円)に達し、12月半ばまで同8レアル前後で推移した。

(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年5月末のSelling相場。

 
ブラジルで初めて野鳥からHPAIの発生を確認
 南米では、2022年末ごろから水鳥などの野鳥や家きんでHPAIの発生が確認されており、これまでベネズエラ、ペルー、エクアドル、ボリビア、コロンビア、アルゼンチン、チリ、ウルグアイ、パラグアイといった国で確認されていた。
 こうした中、23年5月15日にはブラジル南東部エスピリトサント州で初めて野生の海鳥2羽から感染が確認された。その後も新たな感染が確認されたため、ブラジル農牧省は5月22日、全国を対象に動物衛生緊急事態宣言を発出した。この措置は180日間有効であり、連邦政府は、行政機関や民間組織と連携し疾病のまん延防止のための緊急行動を実施するとしている。また、同省に登録された施設では、あらゆる鳥類の展示会などの開催が無期限で停止された。ブラジルでは、これまで南東部エスピリトサント州のほか、リオネジャネイロ州、サンパウロ州、南部リオグランデドスル州の四つの州で野鳥からの感染が確認(計24例、6月7日現在)されている。

(調査情報部 井田 俊二)