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海外需給動向【牛乳・乳製品 米国】畜産の情報 2023年7月号

乳価の下落大きく、経産牛飼養頭数減少へ転じる

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23年4月の酪農家収益、乳価下落で大幅減
 米国農務省農場サービス局(USDA/FSA)によると、2023年4月の全米平均総合乳価は、生乳100ポンド当たり20.7米ドル(1キログラム当たり64.2円:1米ドル=140.77円(注1)、前年同月比23.6%安)と前年同月を大幅に下回った(図1)。また、飼料価格が依然高水準で推移していることから、同月の酪農マージン(注2)は、同52.5%減の同5.84米ドル(同18.1円)と大幅に減少した。

(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2023年5月末TTS相場。
(注2)酪農家のセーフティーネット制度である酪農マージン保障プログラム(DMC)で算定される全米平均総合乳価と飼料費の差額としての収益。DMCでは、酪農マージンが発動基準を下回った場合、補?が発動される。


 
23年4月の経産牛飼養頭数は減少に転じる
 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)によると、2023年4月の生乳生産量は871万4000トン(前年同月比0.3%増)、乳用経産牛飼養頭数は943万頭(同0.3%増)とともに前年同月並みとなった(図2、3)。乳用経産牛飼養頭数は23年1月から増加傾向で推移してきたが、前述した乳価の下落による酪農マージンの減少などを背景に減少に転じた(注3)
 現地情報によると、乳価の下落により一部の州では乳牛のと畜頭数が増加しており、今後数カ月のうちに飼養頭数は前年を下回る可能性があるとしている。

(注3)4月のテキサス州の飼養頭数は、4月10日に同州の酪農場で発生した大規模火災による乳牛の死亡を考慮し、前月比1万5000頭減となっている。




 
23年第1四半期の乳製品輸出量は好調
 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2023年3月の乳製品輸出量は前年同月比で減少となった品目の方が多かった(表)。品目別に見ると、乳糖が前年同月比17.7%増、ホエイも同8.3%増といずれも増加したものの、バターが同36.0%減と大幅に減少したほか、WPC(タンパク質濃縮ホエイ)が同4.1%減、脱脂粉乳が同2.7%減、チーズが同0.4%減となった。
 しかし、1月の乳製品輸出が好調であったことから、23年第1四半期(1〜3月)の輸出額は増加となっている。米国乳製品輸出協会(USDEC)によると、3月のメキシコ向け脱脂粉乳の輸出量が過去最高を記録するなど、中南米、カリブ海地域向け輸出が伸長しているという。一方で、EUのチーズ価格の下落などによる輸出競合国との競争に加え、インフレや中国の需要低迷などの要素により、今後数カ月間、米国乳製品輸出をめぐる環境は厳しいものになると見込んでいる。

 
(調査情報部 上村 照子)