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海外需給動向【牛乳・乳製品 NZ】畜産の情報 2023年7月号

生乳生産は好調も、乳製品国際相場の低迷から乳価は引き下げへ

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23年4月の生乳生産量、過去最高を記録
 ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2023年4月の生乳生産量は152万6000トン(前年同月比6.8%増)と前年同月をかなりの程度上回り、4月単月としては過去最高を記録した(図1)。この結果、22/23年度(6月〜翌5月)同月までの累計は2031万2000トン(前年同期比0.8%減)となり、減少幅は前月から0.6ポイント縮小した。この要因についてニュージーランド証券取引所(NZX)は、全国的に適度な降雨に恵まれ土壌水分量が高まったことで、牧草の生育が良好であったことを挙げている。
 また、5月の生乳生産量についてNZXは、冬季に向かう中で寒波の襲来と日照不足により、一部地域では牧草への影響が懸念されているものの、全国的には牧草の生育状況が順調なことから前年を上回ると予測している。


 
乳製品輸出量、主要4品目すべてで大幅増
 ニュージーランド統計局(Stats NZ)によると、2023年4月の乳製品輸出量は、主要4品目すべてで前年同月を上回った(表1、図2)。
 これは、前年が最大の輸出先である中国の需要低迷(COVID-19拡大に伴う景気後退)により輸出量が大きく落ち込んだことの反動によるところが大きく、同国向けの輸出量は主要4品目すべてで大幅増となった(表2)。この結果、主要4品目の輸出額合計も17億2546万NZドル(1491億8327万円:1NZドル=86.46円(注1)、前年同月比28.8%増)と前年同月を大幅に上回った。
 一方、最近の乳製品国際価格に目を向けると、中国の乳製品需要の回復が業界予想に比べ遅れており、全粉乳と脱脂粉乳の価格は過去5年平均以下の水準にある。こうした背景から、NZ乳業大手フォンテラ社は5月25日、22/23年度の生産者支払乳価を生乳の固形分(注2)1キログラム当たり平均0.1NZドル(9円)引き下げ、同8.2NZドル(709円)とすることを発表した(注3)。また、同日には23/24年度の当初乳価も発表し、同8.0NZドル(692円)にするとした。引き下げに踏み切った理由について同社のハレル最高経営責任者は、「最近の乳製品の国際相場は、乳価を維持できる程のレベルに回復していない」とし、23/24年度の当初乳価についても「中国経済の回復時期や程度はいまだ不透明であり、同国の全粉乳国内在庫が通常レベルを上回っていることを反映している」とコメントした。
 
 
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場の2023年5月末TTS相場。
(注2)乳脂肪分および乳たんぱく質。
(注3)海外情報「フォンテラ社、22/23年度乳価の引き下げと23/24年度当初乳価を発表(NZ)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003544.html)を参照されたい。



 
 
 
(調査情報部 工藤 理帆)