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国内需給動向 畜産の情報 2023年7月号

令和4年度食肉流通統計・令和4年食鳥流通統計調査結果

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 農林水産省が公表している畜産物流通統計調査のうち、本稿では、「食肉流通統計」(令和4年4月〜5年3月)(注1)より成牛(和牛、交雑牛、乳牛)および豚のと畜頭数、主要市場(注2)における卸売価格および取引頭数について、また、「令和4年食鳥流通統計調査結果」(令和4年1〜12月)(注3)より食鳥の処理羽数、重量および1羽当たりの重量について報告する。

(注1)令和4年12月まで確報値、5年1月以降は速報値を機構にて集計。
(注2)中央卸売市場および地方卸売市場を指す。「中央卸売市場」は、卸売市場法(昭和46年法律第35号)の規定により開設されている仙台、さいたま、東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、広島および福岡の10市場。「地方卸売市場」は、卸売市場法の規定により開設されている地方卸売市場のうち、畜産経営の安定に関する法律(昭和36年法律第183号)第3条第1項の標準的販売価格の算出に用いられる市場をいい、茨城、栃木、群馬、川口、山梨、岐阜、浜松、東三河、四日市、姫路、加古川、西宮、岡山、坂出および佐世保の15市場。
(注3)速報値。


【牛肉】
成牛のと畜頭数、3年連続の増加

 令和4年度の成牛のと畜頭数は、畜産クラスター事業などの取り組みにより、全品種で増加したことから、合計では109万2538頭(前年度比3.6%増)と、前年度をやや上回った(図1)。
 品種別に見ると、和牛は畜産クラスター事業などの繁殖基盤強化対策の拡充に加え、乳牛への和牛受精卵移植技術などの活用により、49万4301頭(同2.2%増)と前年度をわずかに上回り、6年連続の増加となった。交雑牛は、肉用子牛価格が比較的高かったことなどを受けて、酪農家における乳牛への黒毛和種交配率が上昇したことなどから、25万3637頭(同9.3%増)と前年度をかなりの程度上回った。乳牛は、引き続き、黒毛和種交配率は上昇している一方で、酪農家における生産抑制によると畜頭数の増加から、33万1611頭(同1.9%増)と前年度をわずかに上回り、11年ぶりの増加となった。なお、と畜頭数全体に占める各品種の割合は、和牛が45.2%、交雑牛が23.2%、乳牛が30.4%となった。

 
和牛のと畜頭数、ピークは11月の5万3848頭
 和牛のと畜頭数は、例年、最需要期の年末に向けてピークを迎え、春のお祝い需要、お盆などの時期に増加する傾向がある。また、卸売価格もこれらの需要期に上昇し、需要期後に下落する傾向がある。令和4年度のと畜頭数を月別に見ると、最も多かったのが、11月の5万3848頭(前年同月比2.3%増)、次いで12月の4万6904頭(同0.9%減)、7月の4万4836頭(同0.3%減)の順となった(図2)。


 
 月別の卸売価格(東京、去勢A−4)を見ると、外食需要の低迷や食品価格全般の値上げなどの影響もあり、7、10月を除き、前年同月を下回った。最も高かったのが4月の1キログラム当たり2476円(同5.9%安)、最も安かったのが8月の同2178円(同2.2%安)となった。
 和牛の主要市場における市場経由率(注4)を見ると、食肉中央卸売市場が32.7%(16万1715頭)と前年度より0.6ポイント低下した一方、食肉地方卸売市場は8.1%(4万167頭)と前年度より0.2ポイント上昇した(図3)。この結果、全体では40.8%(20万1882頭)と前年度より0.5ポイント低下した。

(注4)卸売市場における取引成立頭数が、全と畜頭数に対して占める割合。なお、取引成立頭数は、卸売市場への上場頭数のうち、卸売業者と売買参加者との間に取引が成立した頭数。

 
交雑牛のと畜頭数、2年連続の増加
 交雑牛は、和牛よりも安価で適度な脂肪交雑などが消費者に広く受け入れられていることから、スーパーマーケットなどの量販店へ多く仕向けられている。また、一定数量が和牛同様にホテルやすき焼き店などの外食に仕向けられている。このため、和牛の需要期に連動してと畜頭数が増減し、卸売価格も和牛の影響を受ける傾向がある。令和4年度のと畜頭数を月別に見ると、最も多かったのが、11月の2万5124頭(前年同月比9.1%増)、次いで、12月の2万2965頭(同7.8%増)、3月の2万1867頭(9.0%増)の順となった(図4)。


 
 次に、月別の卸売価格(東京、去勢B−3)を見ると、最も高かったのが5月の1キログラム当たり1602円(同4.2%安)、最も安かったのが2月の1370円(同3.9%安)となった。なお、4年9月〜5年1月は前年同月を上回って推移した。
 また、交雑牛の主要市場における市場経由率を見ると、食肉中央卸売市場は27.9%(7万654頭)と前年度より0.4ポイント上昇した一方、食肉地方卸売市場は14.0%(3万5582頭)と前年度より0.4ポイント低下した(図5)。この結果、全体では41.9%(10万6236頭)と前年度並みとなった。

 
乳牛のと畜頭数、11年ぶりに増加
 乳牛のと畜頭数を月別に見ると、最も多かったのが、11月の3万821頭(前年同月比4.7%増)で、令和元年10月以来、3年1カ月ぶりに3万頭を上回った(図6)。次いで、3月の2万9133頭(同1.0%減)、8月の2万8348頭(同4.8%増)の順となり、4、10、3月を除き、前年同月を上回った。
 月別の卸売価格(東京、去勢B−2)を見ると、最も高かったのが4月の1キログラム当たり1131円(同11.1%高)、最も安かったのが8月の同875円(同10.4%安)となった。
 また、乳牛の主要市場における市場経由率を見ると、食肉中央卸売市場は9.9%(3万2877頭)と前年度より1.2ポイント上昇し、食肉地方卸売市場は4.6%(1万5171頭)と前年度並みとなった(図7)。この結果、全体では14.5%(4万8048頭)と前年度より1.3ポイント上昇した。
 


 
【豚肉】
豚のと畜頭数、5年ぶりに減少

 令和4年度の豚のと畜頭数は、1647万9271頭(前年度比2.1%減)と前年度をわずかに下回った(図8)。平成26年度に発生した豚流行性下痢からの回復や畜産クラスター事業などの取り組みから、近年はおおむね前年度を上回って推移していたものの、令和4年度は飼養頭数の減少などから、5年ぶりに減少した。豚のと畜頭数は、例年、夏場に気温上昇による食欲の減退から増体が遅れることによって減少し、食欲の回復する秋に増加に転じる傾向がある。4年度の豚の月別と畜頭数の推移を見ると、最も多かったのが11月の148万3637頭(前年同月比1.3%減)、次いで、3月の146万9760頭(同2.1%減)、12月の146万3030頭(同3.1%減)の順となった(図9)。





 
 また、月別の卸売価格(東京、上)の推移を見ると4月を除き、すべての月で1キログラム当たり530円を超えており、5〜10月は600円台と高水準となった。卸売価格は、4、12月を除き、前年同月を上回ったが、その要因としては、海外現地相場の高騰や円安により高騰していた輸入品の代替需要などが挙げられる。
 豚の主要市場における市場経由率を見ると、食肉中央卸売市場は5.4%(88万4483頭)と前年度より0.1ポイント上昇した一方、食肉地方卸売市場は7.0%(114万9317頭)と前年度並みとなった(図10)。この結果、全体では12.3%(203万3800頭)と0.1ポイント上昇した。
 
 
 
【鶏肉】
肉用若鶏の処理羽数は前年並み

 令和4年(1〜12月)の食鳥処理羽数(注5)は、8億2171万羽(前年比0.7%増)と前年をわずかに上回った。処理重量(注6)は237万1643トン(同0.2%増)と前年並みとなった。
 このうち、全体の約9割を占める「肉用若鶏(ふ化後3カ月齢未満)」は、消費者の健康志向の高まりや根強い国産志向を背景として、安定した需要が継続していることから、処理羽数は7億3722万羽(同0.2%増)、処理重量は222万4140トン(同0.1%減)と、いずれも前年並みとなった(図11)。なお、全国的に高病原性鳥インフルエンザの発生が確認されたものの、生産量への影響は限定的であったとみられる。
 また、1羽当たりの重量は3.02キログラム(同0.3%減)と、前年並みとなった。近年、1羽当たりの重量が伸びている傾向にあり、大型で成長の早い品種の導入が進んでいることがうかがえる。
 全体の1割を占める「廃鶏(採卵鶏または種鶏を廃用した鶏)」は、処理羽数が8330万4000羽(同6.0%増)、処理重量が14万4087トン(同5.1%増)と、いずれも前年を上回った(図12)。
また、1羽当たりの重量は1.73キログラム(同0.8%減)と、前年をわずかに下回った。
 地鶏などが含まれる「その他の肉用鶏(注7)(ふ化後3カ月齢以上)」は、処理羽数が118万4000羽(同31.0%減)、処理重量が3416トン(同32.0%減)と、いずれも前年を大幅に下回った(図13)。これは、当該分類に含まれる地鶏や銘柄鶏の消費が主に外食によるものとされていることから、COVID−19拡大による外食需要や観光需要の減退が処理羽数および処理重量に反映されたものとみられる。
 また、1羽当たりの重量は2.89キログラム(同1.4%減)と、前年をわずかに下回った。

(注5)調査対象は年間食鳥処理羽数30万羽以上の食鳥処理場。
(注6)食鳥処理場が肉用目的で処理した生体の重量。
(注7)ふ化後3カ月齢以上の鶏。地鶏や銘柄鶏が含まれる。







 
 
(畜産振興部 大西 未来)