23年1〜5月の肉用牛と畜頭数、前年同期比11.7%増
アルゼンチン経済省によると、2023年1〜5月の肉用牛と畜頭数は、600万1000頭(前年同期比11.7%増)と前年同期をかなり大きく上回り、月別に見ても22年5月から13カ月連続で前年同月を上回った(図1)。
同国では、ラニーニャ現象の影響で肉用牛生産地域を中心に厳しい干ばつに見舞われており、牧草や飼料穀物生産などに大きな影響を及ぼしている。このため、肉用牛生産者は牛の保留が困難となり、と畜場やフィードロット向け出荷が増加したとみられる。この結果、肉用牛と畜頭数は22年5月から13カ月連続で前年同月を上回った。また、雌牛のと畜比率は、23年4月が50.2%と19年6月以来3年10カ月ぶりに50%を超えており、繁殖資源の
淘汰も進んでいることがうかがえる。この結果、23年1〜5月の牛肉生産量(枝肉重量ベース)は、と畜頭数の増加により135万8000トン(同9.9%増)と前年同期をかなりの程度上回った。
23年1〜5月の牛肉輸出量は増加する一方、輸出額は大幅に減少
アルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)によると、2023年1〜5月の牛肉輸出量は27万2383トン(前年同期比14.3%増)と前年をかなり大きく上回った(表)。しかしながら、輸出単価が1トン当たり4246米ドル(62万円:1米ドル=145.99円
(注)、同27.9%安)と下落したため、輸出額は11億5644万2000米ドル(1688億8290万円、同17.6%減)と前年同期を大幅に下回った。
輸出先別に見ると、輸出量全体の80.1%を占める中国向けは21万8294トン(同19.1%増)と大幅に増加した一方、輸出単価は1トン当たり3357米ドル(49万円、同32.4%安)、輸出額は7億3279万4000米ドル(1069億8060万円、同19.5%減)と前年同期を大幅に下回った。同国では22年12月、COVID−19対策として実施していた国内外の移動制限や、輸入食品に対する検査や消毒などの実施の解除を決定した。しかしながら、その後も経済の回復が遅れ牛肉需要が低いことに加え、他の主要な牛肉輸出国であるブラジルや豪州からの牛肉供給が潤沢であるため、輸出価格が大幅に低下した。なお、イスラエルやドイツなど中国以外の主要な輸出先の輸出単価についても、前年同期比で1〜2割程度下落した。
23年1月以降、肥育牛(去勢)出荷価格は大幅に上昇
2023年1月以降、肥育牛(去勢)の出荷価格は、干ばつの影響による家畜の出荷頭数が増加する中で、大幅に上昇している(図2)。同国の肉用牛相対取引の指標となるリニエルス家畜市場の23年4月の取引価格は、1キログラム当たり454.81ペソ(259円:1ペソ=0.57円
(注))と、前年同月比60.6%高となった。これは、23年に入ってからも急激なインフレが継続していることに加え、干ばつによりトウモロコシなどの飼料穀物価格が上昇したことなどが要因とみられる。
22年の出荷価格は、海外からの堅調な牛肉需要や急激なインフレの進行などにより前年に続き上昇したが、後半には干ばつの影響により家畜の出荷が増加したことで上昇傾向が緩和していた。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年6月末TTS相場。
(調査情報部 井田 俊二)