畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 豚肉卸売価格は上昇、輸出量は減少

海外需給動向【豚肉/EU】畜産の情報 2023年8月号

豚肉卸売価格は上昇、輸出量は減少

印刷ページ
23年第1四半期の豚肉生産量は前年同期比7.7%減
 欧州委員会によると、2023年3月の豚肉生産量(EU27カ国)は、187万5000トン(前年同月比7.1%減)とかなりの程度減少し、10カ月連続で前年同月を下回った(図1)。同月の1頭当たり枝肉重量は94.6キログラム(同0.1%増)と前年並みであったが、と畜頭数が1983万頭(同7.2%減)とかなりの程度減少したことが影響した。このため、23年第1四半期(1〜3月)の豚肉生産量は、前年同期比7.7%減と前年同期をかなりの程度下回った。
 国別に見ると、ポーランドがと畜頭数の増加により前年同月比6.5%増と前年同月をやや上回った一方、EU全体の豚肉生産量の約4分の1を占めるスペインが同7.0%減、約2割を占めるドイツが同5.2%減、約1割を生産するフランスが同7.0%減と、ポーランドを除く主要生産国がいずれも前年同月を下回った(表1)。
 特にドイツは、豚肉生産量が21カ月連続で前年同月を下回っている。2年前の水準で比較すると、と畜頭数は21年3月の471万頭から23年3月には394万頭と大幅に減少(16.3%減)、豚飼養頭数は20年12月の2607万頭から22年12月には2137万頭と大幅に減少(18.0%減)している。ドイツ養豚生産者協会(ISN)によると、アフリカ豚熱のリスクもある中で、アニマルウェルフェアと環境規制に対応する畜舎改築などへの投資が難しいことがこの減少の要因とされている。




 
23年5月の枝肉価格、前月並みとなるも前年同月を大幅に上回る
 欧州委員会によると、2023年5月の豚枝肉卸売価格(EU27カ国)は、前年同月比28.3%高の100キログラム当たり239.05ユーロ(3万8033円:1ユーロ=159.10円(注))となり、供給の減少を背景に22年12月から上昇が続いている(図2)。同月の上昇率は前月比0.3%高と横ばいになり、一服感が生じたものの、6月の週別価格を見ると、需給ひっ迫の懸念から、前週比0.6〜0.9%高と再び上昇基調に転じている。

(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年6月末TTS相場。

 
23年4月の豚肉輸出量、前年同月を大幅に下回る
 欧州委員会によると、2023年4月のEU域外への豚肉輸出量(EU27カ国)は、15万7417トン(前年同月比27.0%減)と大幅に減少した(表2)。輸出先別に見ると、第2位の英国向けが同9.0%増の2万5857トンと増加したものの、首位である中国向けは同13.4%減の4万6169トン、第3位の日本向けは同36.5%減の2万2219トンとなった。EUの豚肉輸出は、競合する米国、カナダ、ブラジルに比べて価格優位性が低くなっていることで、中国をはじめ、日本や韓国向けの輸出量が減少している。

 
(調査情報部 渡辺 淳一)