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海外需給動向【鶏肉/タイ】畜産の情報 2023年8月号

23年の鶏肉生産量および冷凍鶏肉輸出量は引き続き増加傾向

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23年1〜4月の鶏肉生産量は前年を上回る
 タイ農業協同組合省農業経済局によると、2023年1〜4月の鶏肉生産量は87万2173トン(前年同期比2.2%増)となった(図1)。21年末に同国で発生したアフリカ豚熱発生の影響による鶏肉への代替需要や、コロナ禍からの脱却に伴う国内外からの需要回復に対応すべく生産を拡大する動きがあり、前年をわずかに上回った。

 
23年5月の鶏肉卸売価格は上昇に転じる
 2022年10月以降、下落傾向にあった鶏肉卸売価格は、23年3月を底に反転し、5月の鶏肉卸売価格は1キログラム当たり59バーツ(245円:1バーツ=4.15円(注1))となった(図2)。現地関係者によると、鶏肉価格は一時的に下落したものの、飼料費高騰やエネルギーコストの増加、疾病対策強化などによる養鶏コストが増加する中、鶏肉需要の回復を追い風に徐々に価格転嫁が進んでいる。今後も世界的な経済回復やタイ国内でのアフリカ豚熱発生長期化の可能性などを背景に、旺盛な鶏肉需要が見込まれることで、高値での推移が予測されている。

(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年6月末TTS相場。

 
23年1〜4月の冷凍鶏肉輸出量は前年同期を大幅に上回る
 2023年1〜4月の冷凍鶏肉の輸出量は、16万5756トン(前年同期比66.7%増)と前年同期を大幅に上回った(表1)。また、輸出先別に見ると主要輸出先は軒並み前年同期を上回った。日本向けは外食産業を中心に鶏肉需要が回復してきたことで、5万895トン(同21.4%増)と前年同期を大幅に上回った。また、中国向けはコロナ禍からの脱却に伴い、主要輸入品目であるもみじを中心に3万9148トン(同110.3%増)と前年を大幅に上回った。現地関係者によると、今後の中国向け輸出については、タイ国内の中国向け輸出認定工場が増えなければ、さらなる輸出増は難しいとみている。
 タイと並ぶ日本の鶏肉輸入先であるブラジルでは、高病原性鳥インフルエンザの拡大が懸念されているため(注2)、今後の発生状況によっては、タイ産に切り替える動きが進む可能性があるとみられている。

(注2)農林水産省は令和5年6月28日、ブラジル家畜衛生当局から同国内で発生した高病原性鳥インフルエンザ(H5N1亜型)に係る情報提供を受け、発生州からの生きた家きん、家きん肉などの輸入の一時停止を発表した。農林水産省報道発表資料「ブラジルからの生きた家きん、家きん肉等の一時輸入停止措置について」(https://www.maff.go.jp/j/press/syouan/douei/230628.html)を参照されたい。

 
23年1〜4月の鶏肉調製品の輸出量は前年同期を下回る
 2023年1〜4月の鶏肉調製品輸出量は、18万7118トン(前年同期比12.9%減)と前年同期をかなり大きく下回った(表2)。日本向けは、8万9173トン(同14.5%減)と前年同期をかなり大きく下回った。欧州向けについては、各国で国内在庫量が多いとされ、英国向け(5万1533トン、同9.1%減)、オランダ向け(1万3718トン、同23.3%減)ともに前年同期を下回った。現地関係者によると、欧州では22年半ばからウクライナ産鶏肉の輸入量が増加しており(注3)、同国産と比べてタイ産の価格競争力が弱いことも輸出量減の一因とみられている。

(注3)欧州委員会は23年5月、ロシアのウクライナ侵攻により停滞するウクライナ産農産物への支援の一環として行ってきた同国産農産物に対する輸入関税の一時停止について、近隣の加盟国の一部は、EU各国の農業に影響を及ぼすとして鶏肉を除く一部の農産物について輸入を一時停止した。また、現地報道によると、ウクライナ産鶏肉に対する輸入規制も検討されていると伝えられている。海外情報「欧州委員会、ウクライナからの一部農産物の輸入を一時停止(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003531.html)を参照されたい。


 
(調査情報部 海老沼 一出)