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海外需給動向【牛乳・乳製品/EU】畜産の情報 2023年8月号

乳製品価格の下落により、バターと脱脂粉乳の輸出量が増加

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23年4月の生乳出荷量は前年同月並み
 欧州委員会によると、2023年4月の生乳出荷量(EU27カ国)は、1273万6490トン(前年同月比0.3%増)と前年並みになった(図1)。
 主要生産国別に見ると、首位のドイツ(同3.3%増)および第3位のオランダ(同3.3%増)はやや増加した一方で、第2位のフランスは南部を中心とした干ばつの影響などから同2.1%減となり、23年に入りすべての月で前年同月を下回って推移している(表1)。今後のEUの生乳出荷見込みについて、現地情報によると、22年に記録的な高値で推移した乳価が23年に入り下落していることに加え、フランス南部やイベリア半島などの干ばつによる飼料生産への影響が懸念されるため、今後数カ月の間は減少傾向で推移する可能性が高いとしている。
 



 
23年6月の乳製品価格、粉乳類やバターに下げ止まり感
 欧州委員会によると、直近2023年6月18日の週の乳製品価格(EU27カ国の平均)は、バターが100キログラム当たり474ユーロ(7万5413円:1ユーロ=159.10円(注)、前年同期比34.6%安)、脱脂粉乳が同252ユーロ(4万93円、同37.9%安)、全粉乳が同357ユーロ(5万6799円、同30.3%安)と前年同期を大幅に下回ったものの、前月比ではそれぞれ2.1%高、2.7%高、2.6%高とわずかに上昇し、下げ止まりの傾向を見せている(図2)。一方、生産量が多いチーズ(チェダー)は同358ユーロ(5万6958円、同16.2%安、)、同じくホエイパウダーは同70ユーロ(1万1137円、同47.3%安)となり、前月比でもそれぞれ3.9%安、6.2%安となった。米国農務省によると、EUの乳業各社は長期的に需要が底堅く、安定した収益をもたらすチーズ生産を優先していることから、23年のチーズ生産量は前年並みと見込んでいる。

(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年6月末TTS相場。
 

 
23年第1四半期のバターと脱脂粉乳、輸出は好調
 欧州委員会によると、2023年第1四半期(1〜3月)のEU域外向け乳製品輸出量は、バターが前年同期比9.5%増、脱脂粉乳が同32.6%増と増加した。一方、チーズは同0.6%減、全粉乳が同15.8%減となった(表2)。
 中でもバターの輸出量は、EU産価格の下落に伴い輸出競争力が高まったことで、特に米国、イスラエル、モロッコ、トルコ向けを中心に増加している。また、脱脂粉乳は、中国の輸入需要の回復がけん引した。一方、全粉乳の輸出需要は弱含みであり、主要輸出先であるオマーン、中国向けともに前年同期比で3割を超える減少となった。

 
(調査情報部 上村 照子)