23年5月の生乳生産量、過去最高を記録
ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2023年5月の生乳生産量は97万8000トン(前年同月比7.4%増)と2カ月連続で前年同月を上回り、5月単月としては過去最高を記録した(図1)。また、22/23年度(6月〜翌5月)の累計では、2129万トン(前年同期比0.5%減)と前年度割れが確実と見込まれていた中で、わずかな減少にとどまった。この理由について二ュージーランド証券取引所(NZX)は、悪天候の影響を受けて年度前半の生乳生産は振るわなかったものの、後半は断続的な降雨と気温の上昇により牧草の生育が順調に進んだため、生乳生産が好調に推移したことを挙げている。
また、NZXは23/24年度の幕開けとなる6月の生乳生産量についても、十分な土壌水分量と日照量を基に牧草の生育も順調であり、前年同月を上回る可能性が高いと予測している。
23年5月の乳製品輸出量、主要4品目すべてで大幅増
ニュージーランド統計局(Stats NZ)によると、2023年5月の乳製品輸出量は、最大の輸出先である中国向けが大幅に増加したため、主要4品目すべてで前年同月を大幅に上回った(表1)。特に、全粉乳およびチーズの輸出量は、同国向けが前年同月比で2倍以上増加し、COVID−19から回復に向かう中、今後も同国からの需要増加が期待される。
また、第一次産業省(MPI)が23年6月に公表した「Situation and Outlook for Primary Industries」によると、22/23年度(7月〜翌6月)の乳製品輸出額は、251億2000万NZドル(2兆2573億円:1NZドル=89.86円(注1)、前年比14.1%増)と過去最高を記録すると見込まれている(図2)。この理由についてMPIは、(1)チーズなどの高付加価値商品の輸出量が増加したこと(2)為替相場が米ドル高NZドル安で推移したこと(3)21/22年度に高値で契約された先物商品が22/23年度に出荷されたこと―などを挙げている。さらに、MPIは23/24年度以降の中期的な見通しとして、世界の生乳生産が抑制される中、各国での乳製品需要が高まることから、輸出額は右肩上がりで増加していくと予測している。
(注1) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年6月末TTS相場。
23年6月下旬のGDT価格、バターが続伸
2023年6月20日に開催されたGDT(注2)の1トン当たりの平均取引価格は、脱脂粉乳が前回開催(6月6日)を下回り、依然として下落傾向にあるものの、バターは5回連続の上昇となった(図3)。品目別に見ると、脱脂粉乳は北アジア(注3)からの引き合いが強まったものの、中東からの引き合いが弱まったため、価格はやや下落した。全粉乳については、中東からの引き合いが強まったものの、北アジアからの引き合いが弱まったため、前回並みとなった。バターは、北アジア、東南アジア、中東からの引き合いが強まり、20年9月以来となる5300米ドル(77万3747円:1米ドル=145.99円(注1))台まで上昇した。一方、チーズについては、北アジアからの引き合いが強まったものの、東南アジアやオセアニアからの引き合いが弱まったため価格はわずかに下落した。
(注2)グローバルデイリートレード。月2回開催される電子オークションで、当該価格は乳製品の国際価格の指標とされている。
(注3)ニュージーランド外務貿易省は、中国、日本、香港、韓国、台湾を北アジアとしている。
(調査情報部 工藤 理帆)