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国内需給動向 畜産の情報 2023年9月号

令和5年「畜産統計」について

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 農林水産省が令和5年7月7日に公表した「畜産統計(令和5年2月1日現在)」について、肉用牛、乳用牛、豚、ブロイラーおよび採卵鶏の概要を以下の通り報告する。
 
【肉用牛】令和5年の肉用牛飼養頭数は、前年比わずかに増
乳用種は前年並み、肉用種は増
 肉用牛の飼養戸数は、小規模層を中心に減少傾向で推移しており、令和5年は3万8600戸(前年比4.5%減)と前年からやや減少した(表1)。一方、飼養頭数は、近年、増加傾向にあり、268万7000頭(同2.8%増)と前年からわずかに増加した(図1)。この結果、肉用牛の1戸当たり飼養頭数は、前年から4.9頭増加して69.6頭となり、規模拡大が進展している。
 肉用牛は、肉用種および乳用種(注1)に大別され、飼養頭数のうち約7割が肉用種(188万2000頭、同3.9%増)、約3割が乳用種(80万4400頭、同0.3%増)となっている(図2)。
 






 
 肉用種の内訳を見ると、子取り用めす牛が前年比1.3%増の64万5200頭(肉用牛全体に占める割合は24%)となった一方、肥育用牛は同4.0%増の83万500頭(同31%)、育成牛も同7.9%増の40万6500頭(同15%)となった。
 乳用種の内訳を見ると、交雑種が同2.6%増の56万9600頭(肉用牛全体に占める割合は21%)となった一方、ホルスタイン種ほかは同4.9%減の23万4800頭(同9%)となった。
 
(注1)「畜産統計」では、乳用種の肉用牛とは、ホルスタイン種、ジャージー種などの乳用種の牛のうち、肉用を目的に飼養している牛で、乳用種と肉用種の交雑種を含むと定義されている。
 
全体の4割を占める「500頭以上」階層の経営の飼養頭数が伸長
 肉用牛の総飼養頭数規模別の飼養戸数については、1〜199頭までを含む下位7階層はいずれも前年を下回ったのに対し、200〜500頭以上までを含む上位2階層はいずれも前年を上回った(図3)。1〜4頭の階層が最も多く全体の22%を占める8480戸(前年比6.0%減)、次いで5〜9頭の階層が7090戸(同9.5%減)、10〜19頭の階層が7040戸(同5.0%減)となっており、いずれも全体の18%を占めた。これら下位3階層の全体に占める割合は前年から1ポイント低下したものの58%となっており、多くの割合を占めていることが分かる。また、全体の2%を占める500頭以上の階層は792戸(同1.1%増)、同4%を占める200〜499頭の階層は1440戸(同0.7%増)となり、上位2階層の割合は前年と同じ6%となった。
 肉用牛の総飼養頭数規模別の飼養頭数については、総飼養頭数規模別の飼養戸数と同様に下位層の減少が見られ、1〜19頭までを含む下位3階層はいずれも前年を下回った一方で、20〜500頭以上までを含む上位6階層はいずれも前年を上回った(図4)。500頭以上の階層の飼養頭数が最も多く、全体の44%を占める117万6000頭(同4.3%増)、次いで200〜499頭の階層が17%を占める46万2300頭(同4.0%増)となった。200頭以上の上位2階層が全体に占める割合は前年から1ポイント上昇し61%となり、大規模層で多くの肉用牛が飼養されていることが分かる。



 
(畜産振興部 田中 美宇)
 
【乳用牛】飼養戸数、飼養頭数ともに前年比減
全国の飼養戸数、前年比5.3%減
 令和5年2月1日現在の乳用牛飼養戸数は、1万2600戸(前年比5.3%減)と前年からやや減少した(表2)。地域別に見ると、北海道は5380戸(同3.2%減)、都府県は7240戸(同6.5%減)といずれも減少した。また、乳用牛飼養頭数は、135万6000頭(同1.1%減)と前年からわずかに減少した。地域別に見ると、北海道が84万2700頭(同0.4%減)、都府県は51万3000頭(同2.3%減)といずれも前年をわずかに下回った。1戸当たりの飼養頭数は、107.6頭(同4.4%増)と前年からやや増加した。地域別に見ると、北海道が156.6頭(同2.9%増)、都府県が70.9頭(同4.5%増)といずれも増加している。農業地域別では、沖縄(同1.3%減)を除いたすべての地域で増加している。
 
飼養頭数「100頭以上」の階層、全体の半数を占める
 乳用牛飼養戸数の階層分布を成畜(満2歳以上の牛)の飼養頭数規模別に見ると、100頭以上の階層が2105戸(前年比0.7%減)とわずかに減少し、全体の16.7%を占めた(表3)。このうち200頭以上の階層は、675戸(同0.9%増)とわずかに増加し200頭未満の階層はいずれも減少した。





 また、乳用牛飼養頭数の階層分布を成畜の飼養頭数規模別に見ると、100頭以上の階層が68万9100頭(同1.4%増)と前年からわずかに増加し、全体の50.8%を占めた。このうち200頭以上の階層は、40万3300頭(同2.8%増)とわずかに増加し、全体の29.7%を占めた。一方で、100頭未満の階層については、1〜19頭の階層を除き、減少した。飼養戸数は前年から5.3%減少しているが、200頭以上の階層で飼養戸数および頭数ともに増加していることから、経営の大規模化の進展が見受けられる。
 
乳用種めす出生頭数、前年並み
 直近1年間(令和4年2月〜5年1月)の乳用種めす出生頭数は、27万5100頭(前年比0.1%増)と前年並みであった(図5)。

 
(酪農乳業部 橋 沙織)
 
【豚】令和5年の豚飼養頭数は、前年並み
肥育豚、子取り用めす豚ともに前年並み
 豚の飼養戸数は、小規模層を中心に減少傾向で推移しており、令和5年は3370戸(前年比6.1%減)と前年からかなりの程度減少した(表4)。また、飼養頭数は895万6000頭(同0.1%増)と前年並みとなった(図6)。一方で、豚の1戸当たり飼養頭数は、前年から164.8頭増加して2657.6頭となり、規模拡大が進展している。
 内訳を見ると、子取り用めす豚が前年比0.3%増の79万1800頭、肥育豚が同0.0%減の751万2000頭といずれも前年並みとなった。また、種おす豚が同10.7%減の2万6800頭とかなりの程度減少した一方、その他(販売される肥育用のもと豚を含む)が同1.6%増の62万5400頭とわずかに増加した。




 
「3000頭以上」の経営で、肥育豚飼養頭数全体の約7割を占める
 肥育豚の飼養頭数規模別の飼養戸数については、2000頭以上の階層以外のすべての階層で前年を下回った(図7)。2000頭以上の階層が最も多く、全体の32%を占める972戸(前年比1.5%増)、次いで500〜999頭の階層が21%を占める627戸(同8.6%減)、1000〜1999頭の階層が20%を占める603戸(同4.7%減)となった。これら上位3階層の全体に占める割合は前年から2ポイント上昇し73%となり、多くの割合を占めている。なお、3000頭以上の階層が全体に占める割合は前年比同の21%となった。また、最も減少率が大きかったのは100〜299頭の階層で、前年比14.9%減と前年からかなり大きく減少した。
 肥育豚の飼養頭数規模別の飼養頭数については、2000頭以上の階層が最も多く、全体の79%を占める675万3000頭(同0.9%増)となった(図8)。このうち3000頭以上の階層は587万3000頭(同0.7%減)と全体の69%を占めており、より大規模層で多くの豚が飼養されていることが分かる。




 
【ブロイラー】令和5年のブロイラー飼養羽数は、前年比わずかに増
飼養羽数は増加、出荷羽数は前年並み
 ブロイラーの飼養戸数は、小規模層を中心に減少傾向で推移しており、令和5年は2100戸(前年同)と前年並み、出荷戸数は2120戸(前年比1.4%減)と前年からわずかに減少した(表5)。また、ブロイラーの飼養羽数(注2)は1億4146万3000羽(同1.6%増)と前年からわずかに増加した。出荷羽数(注3)は7億2087万8000羽(同0.2%増)と前年並みとなった(図9)。この結果、ブロイラーの1戸当たり飼養羽数は、前年から1100羽増加し6万7400羽、1戸当たりの出荷羽数は、同5500羽増加し34万羽となり、規模拡大が進展している。
 
(注2)飼養羽数とは、2月1日現在で飼養している鶏のうち、ふ化後3カ月未満で出荷予定の鶏の飼養羽数をいう。
(注3)出荷羽数とは、前年2月2日〜本年2月1日の1年間に出荷した羽数をいう。2月1日現在で飼養を休止し、または中止している場合でも、年間3000羽以上の出荷があれば、羽数が計上されている。



 
ブロイラー出荷羽数、「50万羽以上」の経営で全体の約5割
 ブロイラーの出荷羽数規模別の出荷戸数については、10万〜19万9999羽の階層および30万〜49万9999羽の階層はいずれも前年を上回ったのに対し、3000〜9万9999羽の階層、20万〜29万9999羽の階層および50万羽以上の階層はいずれも前年を下回った(図10)。10万〜19万9999羽の階層が最も多く、全体の29%を占める623戸(前年比4.4%増)となった。3000〜9万9999羽の階層は全体の20%を占める422戸(同11.9%減)となり、30万〜49万9999羽の階層も20%を占める419戸(同13.2%増)となった。
 ブロイラーの出荷羽数規模別の出荷羽数については、出荷羽数規模別の出荷戸数と同様に10万〜19万9999羽の階層および30万〜49万9999羽の階層はいずれも前年を上回ったのに対し、3000〜9万9999羽の階層、20万〜29万9999羽の階層および50万羽以上の階層はいずれも前年を下回った(図11)。50万羽以上の階層が最も多く、全体の49%を占める3億5087万4000羽(同1.2%減)となった。30万〜49万9999羽の階層の全体に占める割合は前年から2ポイント上昇し23%の1億6283万3000羽(同9.3%増)となった。




 
【採卵鶏】令和5年の採卵鶏飼養羽数は、前年比やや減
飼養羽数はひな、成鶏めすともに減少
 採卵鶏の飼養戸数は、小規模層を中心に減少傾向で推移しており、令和5年は1690戸(前年比6.6%減)と、前年からかなりの程度減少した(表6)。また、飼養羽数は、ひなは4123万1000羽(同3.7%減)、成鶏めすは1億2857万9000羽(同6.3%減)といずれも前年から減少した(図12)。この結果、成鶏めすの1戸当たり飼養羽数は、前年から200羽増加し7万6100羽となった。



 
成鶏めすの飼養羽数、「10万羽以上」の経営で全体の8割
 成鶏めすの飼養羽数規模別の飼養戸数については、1000〜9999羽の階層が最も多く、全体の38%を占める573戸(前年比8.2%減)と前年から減少した(図13)。全体の31%を占める1万〜4万9999羽の階層で470戸(同1.7%増)と前年を上回った一方、20%を占める10万羽以上の階層で306戸(同8.4%減)および11%を占める5万〜9万9999羽の階層で169戸(同21.0%減)といずれも前年を下回った。
 成鶏めすの飼養羽数規模別の飼養羽数については、10万羽以上の階層が1億290万8000羽と最も多く、前年比5.6%減ながら全体の80%(前年から1ポイント上昇)を占めている(図14)。なお、前年から増加した階層は1万〜4万9999羽の階層のみで、1160万羽と同5.2%増となった。




 
(畜産振興部 田中 美宇)