23年5月の牛肉生産量、4カ月連続で前年同月を下回る
欧州委員会によると、2023年5月の牛と畜頭数は187万7110頭(前年同月比1.9%減)と4カ月連続で前年同月を下回り、1頭当たり枝肉重量も293.9キログラム(同1.2%減)と12カ月連続で前年同月を下回った。この結果、牛肉生産量(EU27カ国)は55万1620トン(同3.1%減)と4カ月連続で前年同月を下回った(図1)。また、同年1〜5月の累計牛肉生産量は260万510トン(前年同期比5.4%減)と前年同期をやや下回った。
と畜頭数や枝肉重量減少の要因として、飼料費や肥料費などの生産コストの高止まりが挙げられる。さらに、欧州におけるアニマルウェルフェアや環境規制の強化も、減少の一因とみられる。欧州委員会は、7月14日に公表した農畜産物の短期的需給見通し(注1)の中で、23年の牛肉生産量を前年比2.0%減の659万トンと見込んでいる。
23年7月の枝肉卸売価格、2年5カ月ぶりに前年同月を下回る
2023年7月の牛枝肉平均卸売価格(注2)は、100キログラム当たり482.5ユーロ(7万5680円:1ユーロ=156.85円(注3)、前年同月比0.6%安)となり、高水準で推移しているものの、前年同月をわずかに下回った(図2)。EU域内の牛肉生産量の減少などから、枝肉卸売価格は高水準で推移しているものの、前年同月を下回るのは2年5カ月ぶりであり、23年3月以降、下落傾向にある。
この要因について現地報道によると、インフレに加え、7月に欧州の広範囲で高温を記録したことで牛肉の消費需要が低迷していることを挙げている。欧州委員会は前述の見通しの中で、23年の牛肉消費量を前年比1.4%減の647万トン(1人当たり10.0キログラム)と見込んでいる。
(注2)若雄牛(A)、去勢牛(C)および若齢牛(Z)のうち枝肉の格付けが上(R)、枝肉の脂肪の付着度合が平均的(5段階中3)なものの平均価格(A/C/Z-R3)。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年7月末TTS相場。
23年の牛肉輸出量は減少、輸入量は増加の見込み
2023年1〜4月の牛肉輸出量は、前年同期比8.1%減の12万7775トンとかなりの程度減少した(表1)。欧州委員会は前述の見通しの中で、23年の牛肉輸出量は、供給量の減少を背景とした牛肉価格の高止まりで価格競争力が低下することにより、49万トン(前年比5.0%減)とやや減少すると見込んでいる。
一方、同期間の牛肉輸入量は、前年同期比2.6%増の8万5601トンとわずかに増加した(表2)。同見通しの中で、23年の牛肉輸入量を37万トン(前年比5.0%増)と見込んでいる。
(調査情報部 渡辺 淳一)