肉牛価格は横ばいで推移も、今後の気象変化により下落の可能性
肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2023年7月31日時点で1キログラム当たり563豪セント(540円:1豪ドル=95.96円(注1)、前年同期比36.5%安)と、7月に入りほぼ横ばいで推移している(図1)。豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、最近の雨で若齢牛の出荷が先延ばしされたことから供給が一部引き締まったものの、需要が軟化していることが要因としている。一方、現地報道では、今後エルニーニョ現象により乾燥した気候となった場合、牧草の生育不良が見込まれることで飼料の確保が困難となり、牛の出荷が進むとしている。この結果、春(9〜11月)には約3年半ぶりとなる同500豪セント(480円)割れもあり得るとみている。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年7月末TTS相場。
23年7月の成牛と畜頭数は前年同期を大幅に上回って推移
2023年7月の成牛と畜頭数は、週当たり12万頭前後で前年同期を大幅に上回って推移している(図2)。MLAによると、例年は冬(6〜8月)に食肉処理施設のメンテナンスを実施するところが多く、と畜頭数も減少する傾向にあるが、今年は7月末現在ですでに完了し、通常通りの操業を行っているとしている。また、労働力不足の課題はあるものの、主産地であるクイーンズランド州を中心に、比較的安定した食肉処理が維持できているとしている。
23年6月の牛肉輸出量、米国向けが約3年ぶりに首位
豪州農林水産省(DAFF)によると、2023年6月の牛肉輸出量は9万4009トン(前年同月比18.2%増)、23年上半期(1〜6月)の累計でも47万8379トン(前年同期比20.1%増)といずれも大幅に増加した(表)。
同月の輸出量を輸出先別に見ると、米国向けが単月では約3年ぶりに首位となり、2万585トン(前年同月比89.1%増)と約2倍に増加した。これについてMLAは、米国では牛群再構築による牛肉の減産が続く中で、豪州では牛群再構築の完了を経て牛肉の増産が見込まれており、米国を重要な輸出市場として注視している結果としている。現地報道でも、米国の減産の影響が顕著になるとみられる第3四半期(7〜9月)以降は、米国からの需要がより本格化すると見込んでいる。
一方、本年5月31日に豪英FTAが発効(注2)したものの、6月の英国向けは無税枠のわずか1.3%に相当する273トンの輸出にとどまった。現地報道では、英国向けは23年1〜5月の累計でも666トンと小規模であり、本年後半に向けて無税枠を利用した輸出が徐々に増えるとみている。
(調査情報部 国際調査グループ)