23年5月の牛と畜頭数、3カ月連続で増加
ニュージーランド統計局(Stats NZ)によると、2023年5月の牛と畜頭数は35万2793頭(前年同月比8.7%増)とかなりの程度増加し、3カ月連続で前年同月を上回った(図)。と畜頭数の内訳では、去勢牛(6万5640頭、同3.8%増)、雄牛(3万8334頭、同16.9%増)、経産牛(19万5646頭、同10.6%増)、未経産牛(5万3173頭、同3.4%増)のすべてで増加した。また、22/23年度(10月〜翌9月)の5月までの累計でも202万7262頭(前年同期比3.4%増)とやや増加し、同期実績では過去3番目となる高水準を記録した。
この要因についてニュージーランド第一次産業省は、為替が米ドルに対してNZドル安で推移したことで輸出に有利に働き、と畜頭数が増加したことや、食肉処理施設の労働力不足が緩和したことなどを挙げている。
23年6月の牛肉輸出量、米国向けが大幅増
Stats NZによると、2023年6月の牛肉輸出量は5万2934トン(前年同月比12.5%増)と前年同月をかなり大きく上回った(表1)。輸出先別に見ると、米国では牛群再構築が進む中、同国向けは冷凍品を中心に大幅に増加したほか、英国向けは前年同月比で3倍以上の増加となった。これは、本年5月31日にNZ英FTAが発効したことで、無税枠を利用した輸出が増加したことによるものとみられる。一方、現地報道によると、主要輸出先である中国、日本、韓国向けは、インフレ圧力が続く中で牛肉消費量が落ち込み、牛肉在庫が滞留した状況であることなどから前年同月を下回ったと報じられている。
22/23年度の輸出向け牛と畜頭、前年並みで推移
ビーフ・アンド・ラム・ニュージーランド(BLNZ)が公表した「Mid-Season2022-23」の見通しによると、2022/23年度の輸出向け牛と畜頭数は、265万頭(前年度比0.2%減)と前年並みで推移すると見込まれている(表2)。これについてBLNZは、前年同様に生産者乳価が高水準で推移することで酪農部門での雌牛の保留傾向が強まるためとしている。また、牛肉生産量は67万8000トン(同0.4%減)とわずかな減少を見込んでおり、牛肉輸出量も豪州産との競合が強まることなどから、47万8000トン(同0.4%減)と前年度をわずかに下回ると予測している。
(調査情報部 工藤 理帆)