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海外需給【豚肉/ブラジル】畜産の情報 2023年9月号

22年の豚肉輸出量は2年連続で100万トンに到達

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22年の豚肉生産量は9年連続で増加、23年も前年比増で推移
 ブラジル地理統計院(IBGE)によると、2022年のブラジルの豚肉生産量は518万6000トン(前年比5.9%増)と前年をやや上回り、9年連続での増加となった(図1)。これは、豚肉生産量の7〜8割を占める国内消費において、低所得消費者層を中心に牛肉に比べて割安感のある豚肉への志向が強まったことが挙げられる。
 23年1〜3月の豚肉生産量は128万8000トン(前年同期比2.9%増)と前年同期をわずかに上回った。増加の伸びは前年から鈍化しているものの、堅調な輸出需要により増産傾向は継続している。

 
23年の生体豚価格は豚肉需給の緩和により下落傾向で推移
 サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、ブラジルの生体豚価格は2022年1月から上昇傾向で推移し、23年2月には1キログラム当たり7.02レアル(210円:1レアル=29.94円(注))と、20年11月以来の7レアルを超える高値となった(図2)。これは、コロナ禍からの急速な経済の回復による供給網の混乱や人手不足の状況に加え、飼料やエネルギー価格の高騰により生産コストが上昇したことが主な要因である。このため、独立系を中心とした中小規模養豚農家では、生産コストの増加分を吸収できずに収益性が悪化し、経営難に陥るケースも見られた。
 直近23年6月の同価格は、豊作による飼料穀物価格の下落などから生産コストが低下する中、消費者購買力の回復の遅れや豚肉供給量の増加から需給が緩和したことで同5.49レアル(164円)となり、2月の高値から2割程度下落した。
 
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年7月末Selling相場。

 
23年1〜6月の豚肉輸出量は増加傾向で推移
 ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、2022年の豚肉輸出量は101万4000トン(前年比0.1%減)と前年並みにとどまったものの、2年連続で100万トンに達した(図3)。輸出先別に見ると、輸出量全体の4割強を占める中国向けは、コロナ禍による規制の影響で43万8000トン(同14.3%減)と前年をかなり大きく下回った。また、同様に香港向けも大幅に前年を下回った。一方、フィリピン、シンガポール、日本向けなどが増加したことで、中国、香港向けの落ち込みを補完した。
 23年1〜6月の豚肉輸出量は、52万6000トン(前年同期比15.0%増)と前年同期をかなり大きく上回った。輸出先別に見ると、22年末にゼロコロナ政策が終了し中国向けが20万4000トン(同18.8%増)、香港向けが5万3000トン(同21.0%増)といずれも前年同期を大幅に上回った。このほか、チリ、ウルグアイ、日本向けが大幅に増加した。

 
(調査情報部 井田 俊二)