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海外需給【牛乳・乳製品/NZ】畜産の情報 2023年9月号

GDT価格が急落、チーズは2年ぶりの4000米ドル台割れ

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23年6月の生乳生産量、6カ月ぶりに減少
 ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2023/24年度(6月〜翌5月)の幕開けとなる6月の生乳生産量は、23万トン(前年同月比1.7%減)と6カ月ぶりに前年同月をわずかに下回った(図1)。これについて二ュージーランド証券取引所(NZX)は、多くの酪農主産地で濃霧や降雨が続き、日照不足と気温の低下により放牧環境が悪化したことを要因としている。ニュージーランド国立水・大気研究所(NIWA)は、これまでに、より温暖で乾燥気候をもたらすエルニーニョ現象の発生を予測しているが、NZXは、土壌水分量が依然として高く、牧草地のぬかるみなどから放牧への影響が生じていることで、7月の生乳生産量も前年割れと見込んでいる。しかし、生乳生産のピークを迎える10〜12月にかけては、エルニーニョ現象が牧草の生育にプラスの影響をもたらすことで、23/24年度は前年度比1.1%増とわずかな増加を見込んでいる。

 
23年6月の乳製品輸出量、主要4品目すべてで大幅増
 ニュージーランド統計局(Stats NZ)によると、2023年6月の乳製品輸出量は、主要4品目すべてで前年同月を大幅に上回った(表、図2)。これは、前年が最大の輸出先である中国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大に伴う需要低迷から輸出量が大きく落ち込んだことの反動によるところが大きく、同国向けの輸出量は主要4品目すべてで大幅増となった。特に、同国向け脱脂粉乳およびチーズの輸出量は、前年同月比2倍以上の増加となった。
 また、22/23年度(7月〜翌6月)の主要4品目の総輸出量は、282万8867トン(前年比14.9%増)とかなり大きく増加し、総輸出額でも194億4684万NZドル(1兆7271億円:1NZドル=88.81円(注1)、同23.0%増)と大幅に増加した。
 
(注1) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年7月末TTS相場。



 
23年7月下旬のGDT価格、チーズが急落
 2023年7月18日開催のGDT(注2)1トン当たりの平均取引価格は、主要4品目すべてで前回開催(7月4日)を下回った(図3)。この結果、全乳製品の平均取引価格は同3289米ドル(46万6939円:1米ドル=141.97円(注1)、前回比1.3%安)と軟化した。特にチーズは3955米ドル(56万1491円、同9.8%安)とかなりの程度下落し、2年ぶりに4000米ドル割れとなった。NZXは、「北半球を中心に生乳供給が減速する兆しにあるが、需要の回復が遅れている」とし、「他に価格を押し上げる要因は見当たらず、乳製品価格は今後も軟化する可能性が高い」と予測している。
 
(注2) グローバルデイリートレード。月2回開催される電子オークションで、当該価格は乳製品の国際価格の指標とされている。

 
(調査情報部 工藤 理帆)