(1)酪農フリーストール牛舎におけるモニタリング・調査
北海道紋別郡興部町の民間酪農場である株式会社Farm to-mo(以下「Farm to-mo」という)の搾乳フリーストール牛舎の中央付近にサーモニメタン(ライブストックジャパン合同会社製)を設置し、1分ごとにメタンガス濃度を測定した(写真2、3)。また、試験期間中における1時間ごとの牛舎内温度、相対湿度、二酸化炭素濃度についても通信機能付センサー(サーモニ二酸化炭素プラス:ライブストックジャパン合同会社製)を用いて、1時間ごとに測定した。測定期間は2022年9月1日〜12月31日とした(停電などにより一部のデータ欠損あり)。
フリーストール牛舎における1時間ごとの平均メタン濃度と平均二酸化炭素濃度の推移を図4に、温度と相対湿度の推移を図5に示した。期間中のメタン濃度は9月で平均17ppm、12月では429ppmであった。また、二酸化炭素濃度は9月で平均534ppm、12月では1596ppmとなり、いずれも9月が12月と比べて有意に低く推移した。12月においてはメタン、二酸化炭素ともに明確な日リズムが観察された。
フリーストール牛舎における9・10月と12月のメタン濃度と二酸化炭素濃度の関係を図6にそれぞれ示した。それぞれの期間において、両者間には有意な正の相関が認められた(P<0.05)。12月におけるメタンと二酸化炭素濃度の日内変動の推移を図7に示した。両者とも日中(9〜16時)に低く推移した。試験期間中における温度と相対湿度の日内変動については大きな変動は認められなかった(図8)。12月におけるメタン濃度と二酸化炭素濃度の比(CH4/CO2)の日内変動は0.21〜0.30で推移し、大きな変動は認められなかった(図9)。
酪農牛舎においては暑熱ストレス緩和のために主に夏期では換気扇の運用が行われている。9月の二酸化炭素濃度、メタン濃度が低かったのは牛舎内換気の影響により発生したガスが畜舎外に放出されたためであると考えられた。換気が弱まる冬期においては高い二酸化炭素濃度、メタン濃度が観察されたことから、酪農牛舎における搾乳牛の生産活動を反映したものと考えられる。
(2)酪農つなぎ飼い式牛舎におけるモニタリング・調査
青森県内の民間酪農場のつなぎ飼い式牛舎(尻合わせ)の通路中央上部にサーモニメタンを設置し、3の(1)と同様の方法で測定した(写真4)。測定期間は2023年2月1日〜3月6日とした。
つなぎ飼い式牛舎における1時間ごとの平均メタン濃度と平均二酸化炭素濃度の推移を図10に、温度と相対湿度の推移を図11に示した。期間中の平均メタン濃度と二酸化炭素濃度は試験期間後半において低下傾向で推移した。
試験期間中におけるメタンと二酸化炭素濃度の日内変動の推移を図12に示した。両者とも日中(9〜15時)に低く推移した。試験期間中における温度と相対湿度の日内変動については大きな変動は認められなかった(図13)。試験期間中におけるCH4/CO2の日内変動は0.05〜0.08で推移した(図14)。
1日当たり平均メタン濃度と合計乳量との関係、およびCH4/CO2と合計乳量との関係を図15に示した。1日当たり平均メタン濃度、CH4/CO2ともに1日当たり合計乳量との間に有意な負の相関が認められた。
(3)肥育牛舎におけるモニタリング・調査
青森県内の民間肉用牛(交雑種)肥育牛舎(以下「肥育牛舎」という)の飼槽上部にサーモニメタンを設置し、3の(1)と同様の方法で測定した(写真5)。測定期間は2023年2月7〜15日とした。
肥育牛舎における1時間ごとの平均メタン濃度と平均二酸化炭素濃度の推移を図16に、温度と相対湿度の推移を図17に示した。期間中の平均メタン濃度と二酸化炭素濃度は3の(2)の酪農つなぎ飼い式牛舎と比較していずれも低く推移した。
試験期間中におけるメタンと二酸化炭素濃度の日内変動の推移を図18に示した。両者とも飼料給与時(8時と16時)に高くなる傾向が認められた。試験期間中における温度と相対湿度の日内変動については大きな変動は認められなかった(図19)。
(4)肥育豚舎におけるモニタリング・調査
宮崎県川南町の宮崎県畜産試験場川南支場内肥育豚舎の豚房にサーモニメタンを設置し、3の(1)と同様の方法で測定した(写真6、7)。測定期間は2022年12月13日〜23年2月28日とした。
肥育豚舎における1時間ごとの平均メタン濃度と平均二酸化炭素濃度の推移を図20に、温度と相対湿度の推移を図21に示した。期間中の平均二酸化炭素濃度は比較的高く推移したものの、平均メタン濃度は100ppm以下と低く推移した。また、豚舎内のスクレーパー運用とメタン濃度との関連も確認された。試験期間中におけるメタンと二酸化炭素濃度の日内変動の推移を図22に示した。両者とも日中に低く推移し、夜間から翌朝にかけて高くなる日リズムが認められた。試験期間中における温度と相対湿度の日内変動については大きな変動は認められなかった(図23)。
(5)ブロイラー鶏舎におけるモニタリング・調査
青森県南部町のブロイラー鶏舎内にサーモニメタンを設置し、3の(1)と同様の方法で測定した(写真8、9)。測定期間は、鶏舎への入雛2日後から出荷までとなる2022年12月16日〜23年1月22日とした。
ブロイラー鶏舎における1時間ごとの平均メタン濃度と平均二酸化炭素濃度の推移を図24に、温度と相対湿度の推移を図25に示した。期間中の平均二酸化炭素濃度は特に初期段階(餌づけステージ)において他の畜種と比較して著しく高く推移し、前期〜中期〜仕上げ期〜出荷に近づくにつれて低下する傾向が認められた。平均メタン濃度も初期段階で最も高く、その後前期から仕上げ期にかけて低下する傾向を示した。試験期間中の温度は25度以上、相対湿度は50〜60%で推移した。
試験期間中におけるメタンと二酸化炭素濃度の日内変動の推移を図26に示した。両者とも日中に低く推移し、夜間から翌朝にかけて高くなる日リズムが認められた。試験期間中における温度と相対湿度の日内変動については大きな変動は認められなかった(図27)。
ブロイラーでは発育ステージごとに給与飼料や温度調節が変わるが、初期段階でガス濃度に変動が認められたことから、給与飼料などの影響によるものと考えられた。