令和5年8月の鶏卵卸売価格(東京、M玉基準値)は、1キログラム当たり282円(前年同月差78円高)となった(図)。高病原性鳥インフルエンザ(以下「HPAI」という)の大規模発生により鶏卵の供給量は減少していたが、生産再開により徐々に回復しているとみられる。このため8月の同価格は前月から38円下落し、7カ月ぶりの200円台となった。
また、8月の日ごとの推移を見ると、1日は295円で始まり、2回の下落を経て7日以降は280円となった。前月は月内で45円の下落となったが、当月は15円の下落となっており、値下がり幅が縮小している。夏季は一般的に消費量が減少し、価格も年間を通じて底を打つことが多いと言われるが、直近5カ年で比較しても、当月の282円は依然高い水準にあると言える。
この背景として、供給量はいまだ回復中のところへ、今年の記録的な猛暑による産卵率の低下や小玉率の増加に加え、外食産業の卵メニューの提供再開や学校給食など9月の需要回復を控えて引き合いが増加したこと、生産コストの増加などが挙げられる。
今後の供給量については、6月以降、HPAIの発生農場においてひなの再導入が進んでいることから、供給不足の解消が進むと期待される。さらに、今夏の猛暑などの影響を受けた卵重については、涼しい気候に入ることにより産卵環境が改善されることから、回復が期待される。
需要面は、外食市場は回復基調に入り、ファストフード店を中心に秋の卵メニューが復活し、キャンペーンなどが展開されているほか、増加傾向にあるインバウンド需要や秋の旅行シーズンに向けて外食や観光分野での消費拡大もさらに期待される。
(畜産振興部 生駒 千賀子)