肉牛価格は約3年半ぶりに500豪セント割れ
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格(2023年8月29日時点)は、1キログラム当たり499豪セント(483円:1豪ドル=96.78円(注1))となり、牛群再構築の完了に伴う牛の供給増を背景に3年半ぶりの同500豪セント割れとなった(図1)。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年8月末TTS相場。
雌牛と畜頭数、基準値超えで牛群縮小の可能性も
豪州統計局(ABS)が2023年8月に公表した統計によると、23年4〜6月期の牛と畜頭数は173万頭(前期比12.0%増)とかなり大きく、牛肉生産量は54万4300トン(同9.2%増)とかなりの程度増加し、いずれも20年7〜9月期以来となる170万頭、50万トンを超えた(図2)。また、同期の雌牛のと畜頭数割合(FSR)は、牛群再構築と牛群整理との判断基準の一つとなる47%(注2)を超える48.0%となり、今後予想される乾燥気候で牧草の確保が困難となった場合、牛群が縮小局面に入る可能性が示唆されている(図3)。
(注2)同値が47%を超えた場合には牛群が縮小に向かうとされ、47%以下の場合には牛群が再構築段階に入るとされている。
豪州フィードロット協会(ALFA)とMLAが四半期ごとに共同で実施している全国フィードロット飼養動向調査によると、23年4〜6月期末のフィードロット飼養頭数は、125万6832頭と過去2番目の高水準を記録し、フィードロットの稼働率も過去5年平均となる8割を超えている。穀物価格は高水準で推移しているものの、肉牛価格の軟化や輸出需要を追い風にフィードロットの飼養規模の拡大が見受けられる(注3)。
牛肉輸出量、米国向けが今後も高水準で推移する見込み
豪州農林水産省(DAFF)によると、2023年7月の牛肉輸出量は9万7305トン(前年同月比29.8%増)と大幅に増加した(表)。現地報道によると、生産量が増加する中で国内の需給が緩むとともに、海上運賃も低下したことなどが、輸出量の増加につながっているとしている。
同月の輸出量を輸出先別に見ると、米国向けが2万3909トン(同103.4%増)と倍増した。現地報道によると、米国内の牛群再構築により同国の牛肉生産量の減少は、今後2〜3年の間継続するとされており、米国向け牛肉輸出量は引き続き高水準で推移するとみている。また、日本向けは1万7732トン(同4.4%減)とやや減少したが、米国、韓国、中国や東南アジアなどへの輸出が大きく伸びる中で、23年1〜7月の累計では12万225トン(前年同期比5.4%減)といまだ最大の輸出先となっている。
(調査情報部 国際調査グループ)