23年の牛肉生産量は2年連続で増加の見込み
ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)の予測(2023年7月28日公表)によると、23年のブラジルの牛肉生産量は906万5000トン(前年比4.5%増)と前年をやや上回り、2年連続の増加が見込まれている(図1)。これは、生体牛価格の低下から肉用牛生産者が繁殖用雌牛を出荷する傾向が強まることなどから、と畜頭数の増加が見込まれるためである。また、同年の牛飼養頭数は2億3028万頭(同1.2%増)と前年をわずかに上回り、5年連続の増加が見込まれている。
近年の牛肉生産量を見ると、19〜21年はと畜対象となる個体が少なく前年割れで推移したが、22年は牛飼養頭数の増加からと畜頭数が回復したことに加え、牛肉価格が高水準で推移したことで、同4.1%増と増加に転じていた。
23年1〜7月の牛肉輸出量、中国向け輸出停止の影響で前年同期を下回る
ブラジル経済省貿易事務局(SECEX)によると、2023年1〜7月の牛肉輸出量は、104万3082トン(前年同期比4.7%減)と前年同期をやや下回った(表)。これは、同年2月に北部パラー州で非定型BSE(牛海綿状脳症)に感染した個体1頭が確認されたことで、2月23日〜3月22日の間、中国向け輸出が停止したことが影響し、23年2〜4月の牛肉輸出量が前年同期を2〜3割程度下回ったことによる。また、世界経済が不透明な中、国際価格の見直しや牛肉の国内生産増などの影響により、輸出単価は1トン当たり4897米ドル(72万838円:1米ドル=147.20円(注)、同20.0%安)と大幅に低下した。
輸出先別に見ると、輸出量全体の6割弱を占める中国向けは60万4732トン(同6.9%減)と前年同期をかなりの程度下回ったものの、輸出停止解除後は回復傾向にある。これに次ぐチリ向けは、5月以降輸出量が増加し5万6594トン(同36.4.%増)と前年同期を大幅に上回った。
23年8月の肥育牛価格は20年5月以来の水準に下落
サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、2023年の肥育牛価格は前年に続き下落傾向で推移し、8月24日時点で1キログラム当たり13.32レアル(398円:1レアル=29.91円(注)、前年同期比35.1%安)と20年5月以来の低水準となった(図2)。これは、と畜頭数の増加により牛肉の供給量が増加したことなどが要因である。
22年の肥育牛価格は、(1)海外からの堅調な需要(2)飼料や肥料などの生産コストの上昇(3)インフレの進行−などを背景に上昇し、同年3月24日には同23.47レアル(702円)の最高値を記録したが、その後は牛と畜頭数の増加や牛肉の国内需要の低迷などを背景に下落傾向で推移している。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」2023年8月末TTS相場。
(調査情報部 井田 俊二)