23年5月の豚肉生産量、減少基調にある中、前年同月比8.9%減
欧州委員会によると、2023年5月の豚肉生産量(EU27カ国)は、172万9000トン(前年同月比8.9%減)とかなりの程度減少し、12カ月連続で前年同月を下回った(図1)。同月の1頭当たり枝肉重量は94.5キログラム(同0.5%増)と前年同月をわずかに上回ったが、と畜頭数が1829万頭(同9.4%減)とかなりの程度減少したことが影響した。
同月の豚肉生産量を国別に見ると、ポーランドを除く主要生産国で前年同月を下回った(表1)。中でも、デンマークの豚肉生産量は、生産コストの増加による養豚農家の廃業や近隣国への生体輸出などで肉豚供給頭数が減少していることにより(注1)、同25.9%減の10万7000トンと大幅に減少した。一方、生産量1位のスペインのと畜頭数は同4.7%減の459万頭となったが、豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)の影響(注2)があった同年1〜4月(同7.5〜11.6%減)と比較すると減少率は縮小しており、子豚の輸入拡大による生産回復の兆しが表れている。
23年8月の枝肉価格は下落も、依然として前年同月比大幅高
欧州委員会によると、2023年7月の豚枝肉卸売価格(EU27カ国)は、前年同月比29.3%高の100キログラム当たり249.66ユーロ(4万280円:1ユーロ=161.34円(注3))となり、供給量の減少を背景に22年12月から上昇が続いている(図2)。しかしながら、週別価格で見ると7月中旬以降は、直近8月28日の週まで連続して前週を下回って推移しており、同週の週別価格は、前月最終週比6.1%安の同231.14ユーロ(3万7292円)となった。英国農業園芸開発公社(AHDB)によると、EU加盟国のと畜頭数は依然として少なく供給は十分でないとしつつも、夏の天候不順によるバーベキュー需要などの低下が価格下落の一因としている。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年8月末TTS相場。
23年6月の豚肉輸出量、前年同月を大幅に下回る
欧州委員会によると、2023年6月のEU域外への豚肉輸出量(EU27カ国)は、16万4195トン(前年同月比30.3%減)と大幅に減少し、23年上半期(1〜6月)の輸出量は111万1018トン(前年同期比22.8%減)となった(表2)。上半期の輸出量を輸出先別に見ると、輸出量1位の中国向けは同11.8%減の32万1592トン、2位の日本向けは同15.4%減の17万507トンとなった。一方で3位の英国向けは同11.8%増の16万9337トンとかなり大きく増加した。
AHDBによると、豚肉輸出量の減少は豚肉生産量の減少による供給減の影響が大きく、また、豚肉価格が上昇し、国際市場での価格優位性が低下していることに加え、インフレにより生活消費財全般の価格上昇から消費者が鶏肉など手頃な価格の選択肢を求めているためとされている。
(調査情報部 渡辺 淳一)