23年1〜7月の鶏肉輸出量、中国向けは大幅に回復
ブラジル経済省貿易事務局(SECEX)によると、2023年1〜7月の鶏肉輸出量は282万719トン(前年同期比9.8%増)と前年同期をかなりの程度上回った(表)。これは、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の発生や生産コスト上昇などの影響で主要鶏肉生産国からの供給が減少し、ブラジル産鶏肉への需要が高まったためとみられる。
輸出先別に見ると、最大の中国向けは44万1496トン(同33.4%増)と前年の落ち込みから大幅に回復した。同国では22年12月末、COVID-19対策として実施していた移動制限や、輸入食品に対する検査、消毒義務などの措置が解除されたことで、鶏肉需要の回復につながったためである。中国に次ぐ日本向けは25万4968トン(同10.0%増)と前年同期をかなりの程度上回った。このほか、インフレ対策として23年12月まで輸入関税の無税措置を講じているメキシコ向けは9万9255トン(同4.2%増)とやや増加した。
23年の鶏肉卸売価格、需給の緩和から下落傾向で推移
サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、直近(2023年8月24日時点)のブラジルの鶏肉卸売価格は、1キログラム当たり6.32レアル(189円:1レアル=29.91円(注))となった(図)。同価格は22年11月ごろまで同8レアル台を維持していたが、その後、鶏肉供給量の増加に加え、牛肉や豚肉との価格差縮小による鶏肉の価格競争力低下により需要が弱まり、23年7月上旬には同5.66レアル(169円)と3割程度下落していた。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年8月末のTTS相場および現地参考為替相場(Selling)。
ブラジルの家きん、HPAIに感染
2023年5月10日、南東部エスピリトサント(ES)州で初めて野生の海鳥2羽からHPAIの感染が確認された。その後8月30日までに計86羽の感染が確認されている。このうち、ES州では6月に、南部サンタカタリーナ(SC)州では7月に、それぞれ自家消費用に飼っていた家きん1羽で感染が確認された。
この2件の感染確認を受けて日本は、ES州からの家きん肉などの輸入を6月28日から、SC州からの輸入を7月17日からそれぞれ停止する措置を講じた。その後、HPAIの清浄性が確認されたことから、ES州については8月10日、SC州については8月18日にそれぞれ輸入停止措置が解除された。
ブラジルでは5月22日、全国を対象に動物衛生緊急事態宣言(180日間有効)が発出されており、連邦政府は、同国行政機関や民間組織と連携し疾病のまん延防止のための緊急行動を実施している。
(調査情報部 井田 俊二)