23年6月の生乳出荷量は前年並み
欧州委員会によると、2023年6月の生乳出荷量(EU27カ国)は、1249万8220トン(前年同月比0.04%増)と前年並みになり、増産傾向で推移していた22年9月以降の増加率としては最も低いものとなった(図1)。
主要生産国別に見ると、厳しい干ばつとなったフランス(同2.9%減)やイタリア(同5.3%減)は前年同月を下回り、スペインも0.1%の増加にとどまった(表1)。一方、欧州北部を中心とした地域は比較的涼しく、降雨も十分で牧草の生育が良かったことから、ドイツ(同2.1%増)やオランダ(同1.6%増)、ポーランド(同1.9%増)などは前年同月を上回った。
この結果、23年上半期(1〜6月)の生乳出荷量(EU27カ国)は前年同期比0.7%増とわずかに増加した。しかし、現地報道によると、下落が続く生乳取引価格の動向が生産者の生産意欲を減退させることで、23年下半期の生乳生産は減少傾向で推移すると見込まれている。
生乳取引価格の下落が続く
欧州委員会によると、2023年6月の生乳取引価格(EU27カ国の平均)は、100キログラム当たり44.30ユーロ(7147円:1ユーロ=161.34円(注)、前年同月比10.3%安)と前年同月をかなりの程度下回った(図2)。米国農務省によると、生産コストは減少しているものの、それ以上に生乳取引価格が下落していることから、経営が厳しくなっている生産者も増えてきているとされる。なお、同委員会が9月6日に公表した7月の同価格(推定値)は、同43.74ユーロ(7057円)と下落が続いている。
(注)三菱UFJ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年8月末TTS相場。
23年上半期の乳製品輸出量は前年同期比増
欧州委員会によると、直近の2023年8月20日の週の乳製品価格(EU27カ国の平均)は、バターが100キログラム当たり449ユーロ(7万2442円、前年同期比37.1%安)、脱脂粉乳が同227ユーロ(3万6624円、同38.1%安)、全粉乳が同336ユーロ(5万4210円、同31.5%安)、チーズが同358ユーロ(5万7760円、同23.7%安)、ホエイパウダーが同66ユーロ(1万648円、同38.0%安)となり、すべての品目で前年同期を大幅に下回った(図3)。現地報道によると、生乳供給が安定しているため、乳製品の製造量が増加しているという。
また同委員会によると、23年上半期(1〜6月)のEU域外向け乳製品輸出量は、脱脂粉乳が前年同期比25.0%増、チーズが同1.5%増、全粉乳が同12.0%増、バターが同8.6%増と好調に推移した(表2)。乳製品価格が下落に転じたことで、輸出需要の回復につながったとみられる。
(調査情報部 上村 照子)