23年7月の生乳生産量、2カ月連続で減少
ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2023年7月の生乳生産量は28万6000トン(前年同月比0.7%減)と2カ月連続で前年同月をわずかに下回った(図1)。二ュージーランド証券取引所(NZX)によると、主要生乳生産地帯である北島のワイカト地域では、冬期の多雨が響き、土壌水分量が依然として高いことから牧草の生育に遅れが出ており、生産者は放牧地の利用を抑制せざるを得なかったとしている。また、同国乳業最大手のフォンテラ社は8月18日、23/24年度(6月〜翌5月)の生産者支払乳価を生乳の固形分(注1)1キログラム当たり平均0.25NZドル(22円:1NZドル=89.03円(注2))引き下げ、同6.75NZドル(601円)にすると発表した。この発表を受けて生産者は、補助飼料や放牧地での肥料利用の削減に動いており、NZXはこれらの動きが今後の生乳生産に影響を及ぼす可能性を示唆している。
(注1)乳脂肪分および乳タンパク質。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年8月末TTS相場。
23年7月の乳製品輸出量、チーズが大幅増
ニュージーランド統計局(Stats NZ)によると、2023年7月の乳製品輸出量は、他の品目が前年同月を下回る中でチーズが大幅に上回った(表、図2)。品目別に見ると、脱脂粉乳および全粉乳は、最大の輸出先である中国向けや主要輸出先のインドネシア向けがそれぞれ減少したことで、前年同月を大幅に下回った。また、バターおよびバターオイルは、最大の輸出先である中国向けが前年同月比で2割程度の減少となったことにより全体でもかなりの程度下回った。一方、チーズは最大の輸出先である中国向けをはじめ豪州向けが同2倍程度増加したことから、全体でも前年同月を大幅に上回った。
23年8月下旬のGDT価格、全粉乳がかなり大きく下落
2023年8月15日開催のGDT(注3)1トン当たりの平均取引価格は、チーズを除く主要3品目すべてで前回開催(8月1日)時の価格を下回った(図3)。特に全粉乳は前回比11.0%安とかなり大きく下落し、この結果、全乳製品の平均取引価格は同2875米ドル(42万3200円:1米ドル=147.20円(注2)、同7.3%安)と20年5月以来の2900米ドル割れとなった。オーストラリア・ニュージーランド銀行のエコノミストは、世界最大の乳製品輸入国である中国では、COVID-19の間に粉乳の在庫が増加したが、国内の経済成長が鈍化しているため、乳製品需要が停滞しているとした。また、当面は価格回復につながる要因は見当たらず、クリスマスなどの年末需要までに価格が上昇する可能性は低いとしている。
(注3)グローバルデイリートレード。月2回開催される電子オークションで、当該価格は乳製品の国際価格の指標とされている。
(調査情報部 工藤 理帆)