令和5年9月の鶏卵卸売価格(東京、M玉基準値)は、1キログラム当たり292円(前年同月差69円高)と13カ月連続で前年同月を上回った(図1)。前月は7カ月ぶりに300円の大台を割って282円となったが、9月の同価格は前月を10円上回り、前月比103.5%とやや上昇した。
鶏卵相場は、例年、低需要期の夏場に下落し、気温の低下とともに最需要期の12月に向けて上昇する傾向がある。本年も夏場の鶏卵相場は下落傾向で推移したものの、9月後半まで続いた記録的な猛暑により産卵率の低下や小玉率の増加が見られ、高病原性鳥インフルエンザ(以下「HPAI」という)の記録的な発生により減少していた鶏卵の供給は再導入の進展により段階的に回復しているものの、同価格は引き続き、高値で推移している。
日ごとの同価格の推移を見ると、月初の同280円から12日には同295円まで上昇し、同価格は月末まで続いた。この上昇は、大手外食チェーンの卵メニューの提供再開やコンビニ、学校給食での提供が増加したことなどによるものとみられる。
今後の供給量については、ようやく暑さが落ち着き、涼しい気候になることから産卵に適した時期を迎え、卵重の増加や産卵率の上昇が見込まれる。
なお、え付けしたひなが産卵を開始するのは約5カ月齢とされるが、鶏卵供給量に影響を与える採卵用めすの出荷・え付け羽数は、一般社団法人日本種鶏孵卵協会によると、5年8月は841万3000羽(前年同月比2.5%増)と前年同月をわずかに上回った(図2)。5年1〜8月を見ると6796万2000羽(前年同期比2.0%増)と前年同期をわずかに上回っており、今後の同羽数やHPAIで影響を受けた生産量の回復の動向が注目される。
需要面は、人流の回復が進み、増加傾向にあるインバウンド需要や秋の旅行シーズンによる外食、観光分野での消費拡大が期待される。また、おでんなどの季節需要や、年末に向けての業務・加工用の需要も見込まれる。
(畜産振興部 生駒 千賀子)