畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > エルニーニョ現象でと畜頭数が増加、米国向け輸出量は急増

海外需給【牛肉/豪州】畜産の情報 2023年11月号

エルニーニョ現象でと畜頭数が増加、米国向け輸出量は急増

印刷ページ
23年9月の肉牛価格、前年同期比7割安
 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2023年9月28日時点で1キログラム当たり357豪セント(350円:1豪ドル=98.06円(注))と前年同期の約3割の水準まで下落している(図1)。MLAは、エルニーニョ現象の発生により肥育に適した牧草の確保が懸念されていることで、牧草肥育業者からの若齢牛購買需要が軟化しているとみている。
 
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年9月末TTS相場。
 
 
豪州気象局がエルニーニョ現象の発生を公式に宣言
 豪州気象局(BOM)は2023年9月19日、エルニーニョ現象の発生を公式に宣言した。BOMによると、本現象は少なくとも24年2月末まで継続する可能性が高いとしており、今後3カ月の降雨予想でも、豪州の大部分で乾燥気候が見込まれている(図2)。

 
23年9月の成牛と畜頭数、前年の約1.5倍の水準に達する
 週当たりの成牛と畜頭数は増加傾向で推移している。2023年9月第4週は12万7335頭と前年同期の約1.5倍に達し、20年5月以来の高水準となった(図3)。MLAによると、今後予想される乾燥気候に備えて、一部生産者は肉牛をと畜に回し、牛群の規模を縮小しているとしている。また、と畜頭数の増加について現地報道によると、東部州の一部食肉処理施設が出荷される肉牛の増加に対応するため、新たに土曜日も稼働させているとしている。

 
23年8月の牛肉輸出量、米国向けは急増も日本向けは2割強の減少
 豪州農林水産省(DAFF)によると、2023年8月の牛肉輸出量は、堅調なと畜頭数を背景に、10万2351トン(前年同月比11.2%増)とかなり大きく増加した(表)。
 輸出先別に見ると、米国向けが最も多く、2万5760トン(同71.2%増)と大幅に増加し、23年1〜8月の累計でも13万8710トン(前年同期比62.1%増)と日本を抜いて最大の輸出先となった。MLAは、米国では干ばつ後も牧草生育のための十分な降雨がなく、牛群再構築に長期間を要すると見込んでおり、豪州からの牛肉輸出は今後も堅調に推移すると予測している。一方、日本向けは1万6868トン(前年同月比23.4%減)と大幅に減少した。これについてMLAは、日本をはじめとする北アジア全域で、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)からの消費回復を見込んで輸入されたが、需要が低迷していることから、冷凍牛肉の在庫水準が高いことなどと分析している。また本年5月末にFTAが発効した英国向けは、300トン(同291%増)と少量であったが、MLAは9月、今後同国での豪州産牛肉販促活動を展開すると発表している。

 
(調査情報部 国際調査グループ)