23年1〜8月の鶏肉生産量は前年同期を上回る
タイ農業協同組合省農業経済局によると、2023年1〜8月の鶏肉生産量は175万6810トン(前年同期比1.0%増)となった(図1)。米国農務省海外農務局(USDA/FAS)によると、23年のタイの鶏肉生産量は前年比4.5%増と予測されているが、COVID−19拡大前の対前年平均増加率が5〜8%であったことを考慮すると、現時点では以前ほどの生産拡大の勢いを取り戻せていない。この背景として、飼料価格の高騰や国内の観光産業の回復の遅れによる鶏肉需給の緩和などがあるとみられている。
23年7月以降鶏肉卸売価格は下落傾向
2023年9月の鶏肉卸売価格は、前月比1.2%安の1キログラム当たり56.7バーツ(236円:1バーツ=4.17円(注1))となった(図2)。同価格は23年7月以降下落傾向で推移しており、22年の水準を割り込む状況となっている。22年下半期以降の鶏肉価格は、豚肉価格高による代替需要や飼料価格の高騰を反映して高値で推移していたが、23年に入り豚肉価格の下落や主要輸出先でのインフレなどによる購買力の低下などによる需要の減速から、下落傾向で推移している。現地報道によると、10月の菜食週間(注2)明けの需要回復による価格の反転が期待されている。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年9月末TTS相場。
(注2)主に中国系タイ人の間で年に一度行われる慣習で、期間中は身を清めるため、肉類や牛乳、卵、酒類のほか、魚醤を含む味付けの濃い調味料や、ニンニク、ネギ、パクチーなど香りの強い野菜の摂取を避ける(独立行政法人日本貿易振興機構「ビジネス短信」より引用)。
23年1〜7月の冷凍鶏肉輸出は前年を大幅に上回る
2023年1〜7月の冷凍鶏肉の輸出量は、27万3651トン(前年同期比48.0%増)と前年同期を大幅に上回った(表1)。一方、同年7月単月の輸出量は3万1323トン(前年同月比10.9%増)と増加幅は縮小傾向にある。
輸出先別に見ると、日本向けは外食産業を中心に鶏肉需要が回復してきたこと、中国および香港向けはタイ以外の輸入先で発生した高病原性鳥インフルエンザにより、タイ産への需要が高まったことで、それぞれ大幅増となった。また、韓国向けは、同国内での鶏肉生産コストの上昇に伴う鶏肉価格高騰対策および安定供給を目的とした関税の引き下げを実施していることで、同じく大幅増となった。
23年1〜7月の鶏肉調製品の輸出量は前年を下回る
2023年1〜7月の鶏肉調製品輸出量は、33万6271トン(前年同期比12.0%減)と前年同期をかなり大きく下回った(表2)。日本向けは16万989トン(同12.2%減)と前年同期をかなり大きく下回り、欧州(オランダおよび英国)向けも前年同期を下回っている。USDA/FASによると、日本および欧州向けは、物価上昇や金利の引き上げから消費者の購入意欲が低下しているとされ、23年下半期の輸出量は引き続き前年割れが続くとみられている。
(調査情報部 海老沼 一出)