23年8月の乳価は10カ月ぶりに前月を上回る
米国農務省農場サービス局(USDA/FSA)によると、2023年8月の全米平均総合乳価は、生乳100ポンド当たり19.7米ドル(1キログラム当たり65.4円:1米ドル=150.58円(注1)、前年同月比18.9%安)と前年同月を大幅に下回るも、チーズなどの乳製品価格が上昇する中で、前月比では13.2%高と10カ月ぶりに前月を上回った(図1)。この結果、同月の酪農マージン(注2)は同6.46米ドル(同21.5円)となり、19年以来最低水準となった前月から83.5%増と大幅に増加した。また、同月の生乳生産量は861万トン(前年同月比0.2%減)、乳用経産牛飼養頭数は939万頭(同0.2%減)とともに前年並みとなった。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2023年9月末TTS相場。
(注2)酪農家のセーフティーネット制度である酪農マージン保障プログラム(DMC)で算定される全米平均総合乳価と飼料費の差額としての収益。DMCでは、酪農マージンが発動基準を下回った場合、補塡
が発動される。
23年8月のチーズ卸売価格は前年同月比5.5%高
米国農務省農業マーケティング局(USDA/AMS)によると、2023年8月のチーズ卸売価格は、国内の堅調な需要を反映し、前年同月比5.5%高の1ポンド当たり2.19米ドル(1キログラム当たり726円)とやや上昇した(図2)。また、バター卸売価格は同11.0%安の1ポンド当たり2.68米ドル(1キログラム当たり888円)と前年同月比で下落したものの、前月比では4.5%高となった(図3)。現地情報によると、23年は価格が高騰した前年に比べて乳製品消費が拡大しているとされ、23年1〜7月の消費量はチーズが前年同期比1.2%増、バターが同8.2%増、脱脂粉乳が同6.1%増となった。
23年7月のバター輸出量は大幅に減少、脱脂粉乳はわずかに増加
米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2023年7月の主要乳製品輸出量は、アジア諸国の需要低迷に加えEU諸国やニュージーランドとの競合により、脱脂粉乳および乳糖を除いていずれも前年同月を下回った(表)。
品目別に見ると、脱脂粉乳はメキシコの旺盛な需要により前年同月比2.8%増とわずかに増加し、チーズはアジア諸国の需要が限定的となるも、日本の需要回復および中南米からの堅調な需要により、同1.2%減とわずかな減少にとどまった。バターは国内の需要増に伴い輸出価格が上昇する中、主要輸出先であるカナダや韓国、バーレーンからの需要が減少し、同61.3%減と大幅に減少した。
(調査情報部 小林 大祐)