23年8月の生乳生産量、3カ月連続で前年同月比微減
ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2023年8月の生乳生産量は130万1000トン(前年同月比2.1%減)と3カ月連続で前年同月をわずかに下回った(図1)。この要因についてニュージーランド証券取引所(NZX)は、南島の主要生乳生産地帯では、非常事態宣言が発出されるほどの大雨による洪水の発生や、一方で干ばつが発生するなど、各地の異常気象が牧草の生育を妨げたとしている。また、23/24年度(6月〜翌5月)の生産者支払乳価は、同国乳業最大手のフォンテラ社が生乳の固形分(注1)1キログラム当たり平均7.25NZドル(661円:1NZドル=91.19円(注2))としている中で、同国酪農団体のデイリーNZが損益分岐点としている同7.51NZドル(685円)を下回っている状況にある。このため現地報道では、生乳生産量が前年度水準を下回る中で、生産者支払乳価の下落から酪農家の多くが利益を見込めず、厳しい経営になると伝えている。
(注1)乳脂肪分および乳タンパク質。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年9月末TTS相場。
23年8月の乳製品輸出量、主要3品目が大幅増
ニュージーランド統計局(Stats NZ)によると、2023年8月の乳製品輸出量は、全粉乳を除く主要3品目が前年同月を大幅に上回った(表、図2)。品目別では、脱脂粉乳は最大の輸出先である中国向けの伸びから大幅に増加した。また、バターおよびバターオイルも同様に増加した。さらにチーズは、主要輸出先の豪州、韓国、日本向けの増加から大幅に増加した。一方、全粉乳は最大の輸出先である中国向けやインドネシア、豪州向けが減少したことで大幅に減少した。
23年9月下旬のGDT価格、主要3品目が上昇
2023年9月19日開催のGDT(注3)平均取引価格は、チーズを除く主要3品目すべてで前回開催(9月5日)時の価格を上回った(図3)。この結果、全乳製品の平均取引価格は1トン当たり2957米ドル(44万5265円:1米ドル=150.58円(注1)、前回比2.4%高)とわずかに上昇した。
今回の価格上昇について現地金融機関の分析によると、直近のGDT価格が低水準で推移したことで、一過性の需要が生じた可能性が高いとしている。また、今後のGDT価格については、全粉乳を中心に最大の輸出先である中国の需要回復に大きな変化が見込めないことから、引き続き不透明としている。
(注3)グローバルデイリートレード。月2回開催される電子オークションで、当該価格は乳製品の国際価格の指標とされている。
(調査情報部 工藤 理帆)