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国内需給【令和5年度上半期の食肉需給】畜産の情報 2023年12月号

令和5年度上半期の食肉需給

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令和5年度上半期(4〜9月)の食肉の畜種別の需給動向は以下の通り。
 
1 牛 肉
 
生産量、乳用種は減少するも和牛・交雑種は増加
 上半期の牛肉生産量は、17万1571トン(前年同期比1.6%増)と前年同期をわずかに上回った(図1)。品種別に見ると、乳用種は4万145トン(同4.5%減)と前年同期をやや下回ったものの、和牛は8万1970トン(同2.4%増)とわずかに、交雑種は4万7420トン(同7.4%増)とかなりの程度、いずれも前年同期を上回った。
 和牛は繁殖雌牛の頭数が増加したことに加え、乳用牛への和牛受精卵移植技術の活用などにより増加し、交雑種は乳用牛への黒毛和種の精液の活用により増加する中、乳用種は、これらの影響により減少したとみられる。

 
輸入量、冷蔵品・冷凍品いずれも減少
 上半期の牛肉輸入量は、冷蔵品、冷凍品いずれも減少したことから、27万9428トン(注1)(前年同期比13.3%減)と前年同期をかなり大きく下回った(図2)。
 主にテーブルミートとして消費される冷蔵品は、国内需要が低迷する中、為替の影響や米国産輸入量が現地相場の高騰もあり少なかったことなどから、10万5653トン(同11.8%減)と前年同期をかなり大きく下回った。全体の47%を占めた米国産は5万120トン(同18.8%減)と前年同期を大幅に下回った一方、全体の45%を占めた豪州産は4万7462トン(同10.2%増)と前年同期をかなりの程度上回った。
 主に加工・業務用に仕向けられる冷凍品は、国内の輸入品在庫量が多く、主要国を含むほとんどの輸入先からの輸入量が少なかったことなどから、17万3511トン(同14.3%減)と前年同期をかなり大きく下回った。全体の41%を占めた豪州産は7万1319トン(同7.7%減)、全体の33%を占めた米国産は5万7791トン(同9.6%減)と、ともに前年同期をかなりの程度下回った。
 
(注1)輸入量の合計には煮沸肉、ほほ肉、頭肉が含まれている。

 
推定出回り量、わずかに減少
 上半期の牛肉推定出回り量は、物価高騰の影響などによる消費者の低価格志向が進んでおり、牛肉から豚肉や鶏肉への需要の変化などから、44万403トン(前年同期比2.1%減)と前年同期をわずかに下回った(図3)。このうち、国産品は、16万7271トン(同1.5%増)と前年同期をわずかに上回った一方、輸入品は27万3132トン(同4.1%減)と前年同期をやや下回った。
 また、上半期末(9月末)の牛肉推定期末在庫は15万6326トン(前年同月比5.7%減)と前年同月をやや下回った。このうち、輸入品は14万3424トン(同5.8%減)、国産品は1万2902トン(同5.4%減)と、ともに前年同月をやや下回った。


 
 
 
2 豚 肉
 
生産量、前年同期並み
 上半期の豚肉生産量は、猛暑の影響などにより、と畜頭数は減少したものの、平均枝肉重量は増加したことなどから、43万1335トン(前年同期比0.3%減)と前年同期並みとなった(図4)。

 
輸入量、冷蔵品・冷凍品いずれも減少
 上半期の豚肉輸入量は、冷蔵品、冷凍品いずれも減少したことから、49万1030トン(注2)(前年同期比5.1%減)と前年同期をやや下回った(図5)。
 主にテーブルミートとして消費される冷蔵品は、為替や北米産の現地相場高騰などから、19万1743トン(同0.8%減)と前年同期をわずかに下回った。全体の46%を占める米国産は8万7322トン(同5.3%減)とやや、全体の44%を占めるカナダ産は8万5309トン(同2.3%減)とわずかに、いずれも前年同期を下回った。
 主に加工・業務用に仕向けられる冷凍品は、国内の輸入品在庫が多いことに加え、為替や欧州産の現地相場高騰の影響などから、29万9224トン(同7.7%減)と前年同期をかなりの程度下回った。このうち全体の33%を占めるスペイン産は9万8368トン(同11.5%減)、全体の16%を占めるメキシコ産は4万8010トン(同13.4%減)と、ともに前年同期をかなり大きく下回った。
 
(注2)輸入量の合計にはくず肉が含まれている。

 
推定出回り量、前年同期並み
 上半期の豚肉推定出回り量は、物価高騰の影響などがあるものの、消費者の低価格志向が進んでおり、牛肉から豚肉や鶏肉への需要の変化などから、90万6403トン(前年同期比0.1%増)と前年同期並みとなった(図6)。このうち、国産品は42万9278トン(同1.7%減)と前年同期をわずかに下回った一方、輸入品は47万7125トン(同1.7%増)と前年同期をわずかに上回った。
 また、上半期末(9月末)の豚肉推定期末在庫は22万4929トン(前年同月比0.5%増)と前年同月をわずかに上回った。このうち、輸入品は20万3477トン(同0.5%減)と前年同月をわずかに下回った一方、国産品は2万1452トン(同10.7%増)と前年同月をかなりの程度上回った。


 
 
3 鶏 肉
 
生産量、わずかに増加
 上半期の鶏肉生産量は、近年の好調な鶏肉消費を背景に、安定した需要が継続する中、82万6265トン(前年同期比0.4%増)と前年同期をわずかに上回った(図7)。

 
輸入量、ブラジル産、タイ産いずれも増加
 上半期の鶏肉輸入量は、国内での安定的な消費に加え、ブラジルでの高病原性鳥インフルエンザ発生を懸念した供給不安などから買い付けが増加し、30万7849トン(前年同期比10.7%増)と前年同期をかなりの程度上回った(図8)。主要国のうち全体の71%を占めるブラジル産は21万8980トン(同6.4%増)とかなりの程度、全体の27%を占めるタイ産は8万2159トン(同25.7%増)と大幅に、いずれも前年同期を上回った。

 
推定出回り量、わずかに増加
 上半期の鶏肉推定出回り量は、畜産物の中で鶏肉は比較的安価なことや、外食需要などが堅調であることから、全体では112万5470トン(前年同期比1.2%増)と前年同期をわずかに上回った(図9)。このうち、主に家計消費用に仕向けられる国産品は82万3265トン(同0.8%減)と前年同期をわずかに下回った一方、大部分が加工用、外食・中食用に仕向けられる輸入品は30万2205トン(同7.2%増)と前年同期をかなりの程度上回った。
 上半期末(9月末)の鶏肉推定期末在庫は16万2546トン(前年同月比10.5%増)と前年同月をかなりの程度上回った。このうち、輸入品は13万2497トン(同9.3%増)とかなりの程度、国産品は3万49トン(同16.3%増)と大幅に、いずれも前年同月を上回った。

 
(畜産振興部 田中 美宇)