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海外需給【牛肉/EU】畜産の情報 2023年12月号

牛肉生産量減少などの影響で、枝肉卸売価格は引き続き高水準

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23年7月の牛肉生産量、前年同月比4.9%減
 欧州委員会によると、2023年7月の牛肉生産量(EU27カ国)は、と畜頭数の減少(前年同月比4.6%減の165万3580頭)により、48万4620トン(同4.9%減)と前年同月をやや下回った(図1)。牛肉生産量が前年同月を下回るのは6カ月連続であり、23年1〜7月の累計では、362万3980トン(前年同期比4.6%減)となった。同期の牛肉生産量を加盟国別に見ると、ドイツ(同1.0%増)とオランダ(同3.5%増)を除きすべての主要生産国で前年同期を下回り、特にイタリアは同21.9%減と大幅に減少した。同委員会が10月9日に公表した農畜産物の短期的需給見通し(注1)によると、年末にかけて飼料価格の下落や枝肉重量の増加により牛肉生産量の回復が期待されるため、23年の牛肉生産量は前年比3.1%減の651万トンと見込まれている。
 
(注1)海外情報「欧州委員会、食肉の短期的需給見通しを公表(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003610.html)を参照されたい。

 
23年9月の枝肉卸売価格、3カ月連続で前年同月を下回るも依然高水準
 2023年9月の牛枝肉平均卸売価格(注2)は、100キログラム当たり484.71ユーロ(7万7631円:1ユーロ=160.16円(注3)、前年同月比1.7%安)となった(図2)。同価格は、2年5カ月ぶりに前年同月を下回った23年7月から3カ月連続で前年同月を下回っているが、引き続き高水準を維持している。
 現地報道によると、インフレなどにより消費需要は低迷しているものの、EU域内の牛肉生産量および輸入量の減少により枝肉価格は堅調に推移している。欧州委員会は前述の見通しの中で、23年の牛肉消費量を前年比2.9%減の637万トン(1人当たり9.9キログラム)と見込んでいる。
 
(注2)若雄牛(A)、去勢牛(C)および若齢牛(Z)のうち枝肉の格付けが上(R)、枝肉の脂肪の付着度合が平均的(5段階中3)なものの平均価格(A/C/Z-R3)。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年10月末TTS相場。
 

 
23年1〜7月の牛肉輸出量はわずかに減少、輸入量はやや減少
 2023年7月の牛肉輸出量は、3万5875トン(前年同月比6.9%増)とかなりの程度増加した(表1)。同年5月以降はトルコによるEU産牛肉の輸入再開や英国向けの増加により、前年同月比増に転じた。同年1〜7月の累計では前年同期比2.0%減の23万7453トンとなったが、欧州委員会は前述の見通しの中で、23年の牛肉輸出量は、供給量の減少による牛肉価格の高止まりから価格競争力が低下したため、前年比5.0%減と見込んでいる。
 一方、同年7月の牛肉輸入量は、主要な輸入先である英国からの輸入量が大幅に減少したことが影響し、2万1603トン(前年同月比22.7%減)と大幅に減少した(表2)。同委員会は見通しの中で、23年の牛肉輸入量を前年比2.0%減と見込んでおり、同年1〜7月の累計では前年同期比5.6%減の14万9916トンとなっている。




 
(調査情報部 藤岡 洋太)