畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 成牛と畜頭数、3年半ぶりとなる高水準

海外需給【牛肉/豪州】畜産の情報 2023年12月号

成牛と畜頭数、3年半ぶりとなる高水準

印刷ページ
23年10月の肉牛価格は横ばいで推移
 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2023年9月下旬まで急激な下落が続いていたが、10月に入りほぼ横ばいで推移している(図1)。直近10月30日時点の同価格は、1キログラム当たり358豪セント(348円:1豪ドル=97.19円(注1))と前週からわずかに値を上げた。市場では、豪州気象局(BOM)がエルニーニョ現象の発生を宣言したことで、乾燥による牧草不足の懸念が広がり、若齢牛の出荷加速が価格下落に拍車をかけた。しかし、一部地域で一定の降雨が記録されるなど、本格的な乾燥気候に入っていないことなどから、市場はこう着状態にあるとみられる。
 
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年10月末TTS相場。

 
23年10月の週当たり成牛と畜頭数は13万頭を突破
 週当たりの成牛と畜頭数は依然として増加傾向にあり、2023年10月第3週は13万2421頭と20年5月以来となる13万頭を突破した(図2)。現地報道によると、今後の干ばつに備えた肥育牛の早期出荷が行われているほか、豪州の気候が夏に近づき、バーベキュー需要が高まっているため、食肉加工業者が土曜日の稼働を増やすなどして処理能力を高めていることなどが要因とされている。しかし一部の食肉加工施設では、コロナ禍で停滞していた移民の増加などから労働者の住宅不足が処理能力を制限する要因になっているとされ、今後の処理量の動向が注目されている。
 

 
23年9月の牛肉輸出量、米国向けを中心に大幅に増加
 豪州農林水産省(DAFF)によると、2023年9月の牛肉輸出量は、と畜頭数の増加を背景に、9万8713トン(前年同月比40.4%増)と大幅に増加した(表)。


 
 輸出先別に見ると、米国向けは引き続き豪州産牛肉の最大市場であり、9月の輸出量は前年同月の2.8倍に増加し、同年1〜9月の累計でも前年同期比73.3%増となった。9月の日本向けは前年同月比3.1%増とやや増加したが、輸出先としては第4位の市場となった。同年1〜9月の累計では前年同期比7.0%減となったが、現地報道によると、日本国内の冷凍牛肉の在庫水準が依然高い状況にあるとしている。9月の東南アジア向けは、特にインドネシア向けの伸びが大きく、前年同月比84.6%増と大幅に増加している。現地報道によると、同国で発生しているランピースキン病に関連し、豪州から輸出される生体牛の皮膚に傷がある個体の輸入を拒否しており、代わりに豪州産牛肉の輸入量を増やしていることが増加要因としている。
 また、中東向けに関して豪州政府によると、湾岸協力理事会(GCC)(注2)が同年10月、豪州から輸入する冷蔵食肉の賞味期限を延長したことで海上輸送が可能となり、製品1キログラム当たり約3豪ドル(292円)の輸送コスト削減になるとされている。これにより、今後、中東向けの市場アクセスのさらなる拡大が期待されている。
 
(注2)1981年にサウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーン、オマーン、カタール、クウェートによって設立された組織。防衛・経済をはじめとするあらゆる分野における参加国間での調整、統合、連携を目的としている(外務省ウェブサイト)。
 
(調査情報部 国際調査グループ)