23年9月末の繁殖雌豚頭数は引き続き減少
中国農業農村部によると、2023年9月末時点の繁殖雌豚頭数は4240万頭(前年同月比2.8%減)と前年同月をわずかに下回っている(図1)。同頭数は3月末以降、減少傾向にあるが、9月は農業農村部が適切な水準としている4100万頭程度を3.4%上回っている状況にある。また、総飼養頭数は4億4229万頭(前年同月比0.4%減)と前年同月をわずかに下回り、前期(23年6月)を1.6%上回った。
23年9月の豚と畜頭数、引き続き前年を上回る
2023年9月の豚と畜頭数は、2775万頭(前年同月比31.6%増)と前年同月を大幅に上回った(図2)。これにより、同年第3四半期(7〜9月)の豚肉生産量は1269万トンと前年同期を4.8%上回った。中国農業農村部によると、豚肉の供給能力が十分に確保されている中で、学校の新学期の始まりや、中秋節および国慶節に関する大型連休による需要にけん引され、と畜頭数が増加したとされている。現地関係者によると、23年7月以降、産地の一部で家畜疾病が流行するなどして飼育環境が不良となったことなどから、出荷時体重140キログラムを超える大型の生体豚出荷が減少し、代わりに標準サイズの生体豚出荷が増加したことも、と畜頭数が高水準で推移している一因とされている。
23年9月の豚肉価格は安値推移からやや回復
安値で推移している豚肉価格は2023年8月にやや回復し、同年9月は前月比0.8%高の1キログラム当たり26.9元(557円:1元=20.69円(注))となった(図3)。前述の通り、季節要因により豚肉価格がやや回復したことで、中国農業農村部の統計では、同年1月から継続していた大規模養豚の赤字経営は8月に黒字へと転換した。農業農村部は今後の豚肉価格について、需要期に向けて価格は上昇傾向となるが、昨年ほどの価格上昇の可能性は低く、前年を下回って推移すると見込んでいる。
23年9月の子豚価格は、同4.4%安の同31.4元(650円)となった。現地関係者によると、生産者には、今後の需要期に向けた豚肉価格高騰の期待感と現状の価格安の継続懸念の両方があるとされている。このため、子豚の需要に左右される子豚価格は方向性が定まらない動きを見せている。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年10月末TTS相場。
23年1〜9月の豚肉輸入量は前年同期をやや上回るも、9月は2カ月連続で前年同月を大幅に下回る
2023年1〜9月の豚肉輸入量は、126万6918トン(前年同期比4.7%増)と前年同期をやや上回った(表)。しかし、直近8月の豚肉輸入量は10万9544トン(前年同月比20.8%減)、9月は10万3525トン(同31.8%減)といずれも前年同月を大幅に下回っている。現地関係者によると、国内豚肉価格の安値推移と大量の冷凍豚肉在庫を背景に、輸入品の価格優位性がなくなりつつあり、輸入意欲が低下しているとされている。
(調査情報部 海老沼 一出)