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海外需給【牛乳・乳製品/EU】畜産の情報 2023年12月号

生乳出荷量は前年並みも、生乳・乳製品価格は前年を大幅に下回る

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23年8月の生乳出荷量は3カ月連続で前年並み
 欧州委員会によると、2023年8月の生乳出荷量(EU27カ国)は、1213万7000トン(前年同月比0.1%増)と、6月以降3カ月連続で前年同月並みとなった(図1)。
 主要生産国別に見ると、比較的冷涼で降雨に恵まれたドイツ(同0.8%増)やオランダ(同0.3%増)、ポーランド(同1.3%増)などは前年同月を上回った(表)。一方、厳しい干ばつとなったフランス(同1.8%減)やイタリア(同0.5%減)は前年同月を下回った。
 23年1〜8月の生乳出荷量は、同年上半期(1〜6月)の良好な天候条件により1頭当たり乳量が増加したため、前年同期比0.6%増となった。同委員会は10月9日に公表した農畜産物の短期的需給見通しの中で、23年の1頭当たり乳量を前年比1.0%増の7710キログラムとなるとした。その一方、22年に比べて低下しつつも依然として高止まりにある生産コストにより酪農経営が厳しいため、今後も経産牛の淘汰とうたが進み、23年12月時点の経産牛飼養頭数は前年比0.5%減の1970万頭となるとし、同年の生乳出荷量を同0.3%増の1億4530万トンと見込んでいる。




 
 
生乳取引価格は4カ月連続で前年同月を下回る
 欧州委員会によると、2023年8月の生乳取引価格(EU27カ国の平均)は、100キログラム当たり43.65ユーロ(6991円:1ユーロ=160.16円(注)、前年同月比16.7%安)と前年同月を大幅に下回ったものの、前月並みとなった(図2)。生乳取引価格は23年当初から下落が続いており、前述の通り、酪農経営は厳しいものとなっている。
 
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年10月末TTS相場。
 

 
主要乳製品価格は前年同月比大幅安
 欧州委員会によると、2023年10月22日の週の乳製品価格(EU27カ国の平均)は、バターが100キログラム当たり478ユーロ(7万6556円、前年同期比30.9%安)、脱脂粉乳が同257ユーロ(4万1161円、同28.4%安)、全粉乳が同349ユーロ(5万5896円、同26.8%安)、チーズが同358ユーロ(5万7337円、同23.7%安)、ホエイパウダーが同80ユーロ(1万2813円、同24.1%安)となり、すべての品目で前年同期を大幅に下回った(図3)。しかしながら、23年10月に入りバターおよび脱脂粉乳の価格は連続して前週を上回って推移し、10月22日の週は、バターは前月最終週比6.9%高、脱脂粉乳は同10.3%高となった。米国農務省農業マーケティング局(USDA/AMS)によると、欧州のバター需要は堅調であり、在庫が減少しているという。また、脱脂粉乳は現在の需要を満たす在庫は確保されているものの、生乳がチーズなど他の乳製品に仕向けられているため脱脂粉乳の生産が減速し、一部の乳業は契約上の必要量を満たすために在庫を手元に確保しているという。

 
(調査情報部 渡辺 淳一)