国産トウモロコシ価格、高い水準ながらも弱含みでの推移と予想
中国農業農村部は2023年10月23日、「農産物需給動向分析月報(2023年9月)」を公表した。この中で、同年9月の国産トウモロコシ価格は前月比1.4%高となり、上昇幅は縮小しつつも高い水準にある(図1)。同月の国内のトウモロコシ需給を見ると、供給面では新穀の流通が徐々に始まり、今年は作付面積の拡大や天候に恵まれたことで、今後の供給増が期待されている。需要面では代替飼料となる小麦の価格が比較的高いことで、トウモロコシの飼料利用拡大が期待されるほか、エタノールやコーンスターチ(でん粉)製造各社の設備更新が終了し、これら業界全体の稼働率の上昇から引き合いが強まっている。このように、短期的には国産トウモロコシの需要は強く価格は高い水準ながらも、今後の供給増から弱含みでの推移が見込まれている。ここ数カ月の価格上昇について現地業界関係者は、中国国内で豊作が期待されつつも、世界各地での紛争から輸入への影響を見据えた動きとしている。
各地の価格動向を見ると、主要養豚生産地である中国南部向け飼料原料集積地となる広東省黄埔港到着の輸入トウモロコシ価格(関税割当数量内:1%の関税+25%の追加関税)は、23年9月が1キログラム当たり2.28元(47円:1元=20.69円(注))となった。また、国産と輸入との価格差は、同月の国産トウモロコシ価格(東北部産の同港到着価格)が同2.96元(61円)、輸入価格が前月比1.4%上昇したことで同0.68元(14円)に縮小した。
国産大豆価格、取引業者の様子見から横ばいでの推移と予想
2023年9月の国産大豆価格は、前月同となった(図2)。同月の国内の大豆需給を見ると、供給面では新穀の流通が徐々に始まり、また、備蓄在庫(旧穀)の放出が定期的に行われていたことで、市場への供給量は増加している。需要面では冷涼な気候になりつつあることで、食用油や大豆製品の需要拡大が期待されているが、市場への供給増を見据え、取引業者は様子見の姿勢を維持している。このため、短期的には国産大豆価格は横ばいでの推移が見込まれている。
各地の価格動向を見ると、主産地である黒竜江省の食用向け国産大豆平均取引価格は、23年9月が1キログラム当たり5.12元(106円、前年同月比16.9%安)と前年同月を大幅に下回った。また、大豆の国内指標価格の一つとなる山東省の国産大豆価格は、同5.74元(119円、同12.0%安)と同じく下回った。この結果、国産大豆と輸入大豆との価格差は、輸入価格が落ち着きを見せていることで、同0.64元(13円)と前月からわずかに縮小した。
国際相場に影響する大豆の輸入量については、前年に比べて高い水準で推移している。23年(1〜8月)の輸入量は7163万トン(前年同期比18.3%増)、輸入額は同9.0%増の440億9700万米ドル(6兆6370億円:1米ドル=150.51円(注))と報告されている。主な輸入先はブラジル(総輸入量の67.0%)、米国(同27.8%)、アルゼンチン(同2.2%)であり、5月以降はブラジルからの輸入割合が高まっている。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年10月末TTS相場。
(調査情報部 横田 徹)