令和5年11月の鶏卵卸売価格(東京、M玉基準値)は、1キログラム当たり254円(前年同月比3.1%安)と15カ月ぶりに前年同月を下回った。また、4カ月連続で200円台で推移しているが、月別では本年1月以降において最安となった(図1)。
なお、日ごとの価格の推移を見ると、月初の同265円から2回続落し、16日に同250円となり月内で15円の下落となった。
鶏卵相場は、例年、気温の低下とともに最需要期の12月に向けて上昇する傾向にあるが、本年11月の同価格は前月比10.2%安とかなりの程度下落し、また本年6月以降では9月を除き、前月を下回って推移しており、例年の動きと異なっている。
供給面については、高病原性鳥インフルエンザ(以下「HPAI」という)からの生産復帰が進んでいることや、10月ごろからの気温の低下に伴い、産卵率と卵重が回復し、生産量は堅調に推移していると見込まれる。
需要面については、外食産業などでの秋限定の卵メニューの展開が終了し、落ち着きを見せているが、今季は、新型コロナウイルス感染症が感染症法の分類で「第5類」に引き下げられてから初めての年末年始となり、活発な人流が見込まれ、鍋物、おでんなどの季節需要や、外食、観光などで年末年始の業務・加工用などの需要の高まりが期待されることから、今後の動向が注目される。
一方、一般社団法人日本養鶏協会によると、業務・加工消費については、外食、加工用に対する供給が減少したことにより利用が抑制されてきた経緯があり、鶏卵を多く使用する商品への変更には約半年ほどの期間を要し、需要回復の速度は家計消費用の回復と比較して遅いと思慮されるという(一般社団法人日本養鶏協会「鶏卵の需給見通し(2023年〈令和5年〉9月)」)。
これらのことから、今後の順調な供給の回復に対し、需要回復の動向が一層注目される。
鶏卵小売価格、7カ月連続300円台と高水準で推移
鶏卵小売価格(東京都区部)は、11月は1パック当たり309円(前年同月差62円高)となり、31カ月連続で前年同月を上回り(図2)、7カ月連続300円台の小動きでの推移となっている。
供給量は、HPAIからの生産復帰により生産量、卵重ともに回復しているといわれ、今後も順調な出荷が見込まれる。需要面では、一段と寒さが厳しくなり、季節需要がさらに高まると見込まれる一方で、11月の同価格は過去5カ年の平均価格231円に対し、33.9%高と大幅に上回っており、クリスマスの洋菓子需要や年末商戦の盛り上がりを迎え、同価格の動きが注視される。
(畜産振興部 生駒 千賀子)