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海外需給【牛肉/豪州】畜産の情報 2024年1月号

米国向けを中心に牛肉輸出量は大幅増

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降雨による牧草確保の見通しから肉牛価格が反発
 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2023年11月に入り大きく反発している。直近11月29日時点の同価格は1キログラム当たり559豪セント(556円:1豪ドル=99.45円(注1))と、このひと月の間で同200豪セント(199円)以上上昇し、4カ月前の水準まで戻した(図1)。現地報道によると、エルニーニョ現象の発生により乾燥した気候が予想される中で、一部地域で一定の降雨が記録されたことで、年末に向けて牧草を確保できるとの見通しから、若齢牛の需要が強まっていることが要因とされている(図2)。
 
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年11月末TTS相場。




 
 成牛と畜頭数および牛肉生産量は堅調に推移
 豪州統計局(ABS)が2023年11月に公表した統計によると、23年7〜9月期の牛のと畜頭数は191万頭(前期比10.5%増)、牛肉生産量は58万9400トン(同8.3%増)と堅調に推移している(図3)。MLAによると、これらの動きは今後の干ばつに備えて、牧草肥育農家からの肥育牛の早期出荷の動きを反映したものとされている。
 豪州フィードロット協会(ALFA)とMLAが四半期ごとに共同で実施している全国フィードロット飼養動向調査によると、23年7〜9月期末のフィードロット飼養頭数は、157万6858頭と過去最高を記録した。今後予想される乾燥した気候でも安定的な牛肉生産が可能であることから、フィードロットの飼養規模が拡大している(注2)
 
(注2)海外情報「2023年9月末のフィードロット収容可能頭数、過去最高を更新(豪州)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003636.html)を参照されたい。
 

 
23年10月の米国向け牛肉輸出量、前年同月から倍増
 豪州農林水産省(DAFF)によると、2023年10月の牛肉輸出量は、成牛と畜頭数と牛肉生産量の増加を背景に、10万5131トン(前年同月比44.1%増)と大幅に増加した(表)。
 特に米国向けは、同国の牛群再構築に伴う牛肉生産量減少を背景に、2万7613トンと前年同月比2倍となった。また、中国向けは1万9675トン(同37.4%増)、1〜10月の累計でも17万1586トン(前年同期比30.3%増)と大幅に増加している。現地報道によると、豪中自由貿易協定(FTA)で定められた19万6349トンのセーフガード数量を年内に超える可能性が指摘されており、本数量を超過した場合、現在の1.2%の関税が年末まで12%に引き上げられることになる。他方で連邦政府のファレル通商大臣は11月、約3年にわたり中国向け輸出が停止している食肉処理施設について、年末までに中国側から再開合意が得られる見通しであることを公表している(注3)
 
(注3)海外情報「豪州政府、主要食肉輸出3施設からの中国向け輸出再開を発表(豪州)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003659.html)を参照されたい。

 
(調査情報部 国際調査グループ)