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海外需給【豚肉/EU】畜産の情報 2024年1月号

減産傾向は変わらず、枝肉価格の下落も継続

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23年8月の豚肉生産量、前年同月比5.3%減
 欧州委員会によると、2023年8月の豚肉生産量(EU27カ国)は、170万トン(前年同月比5.3%減)とやや減少し、15カ月連続で前年同月を下回った(図1)。同月の1頭当たり枝肉重量は92.1キログラム(同1.7%増)と前年同月をわずかに上回ったが、と畜頭数が1850万頭(同6.9%減)とかなりの程度減少したことが影響した。この要因として、欧州での母豚飼養頭数の減少や、アフリカ豚熱(ASF)(注1)の収束が見通せないことが挙げられる。欧州委員会によると、飼料価格が徐々に下落しているため、本年末から24年にかけて、生産量はいくらか回復すると見込んでいる。
 
(注1)直近では、11月下旬にもボスニア・ヘルツェゴビナやルーマニアなどの東欧諸国の養豚場でアフリカ豚熱の発生が確認されている他、ドイツやイタリアでも継続的に野生イノシシの感染が確認されている。

 
 23年1〜8月の豚肉生産量を主要国別に見ると、生産量第1位のスペインは、前年同期比4.3%減の321万7990トンとなった(表1)。この要因として米国農務省(USDA)は、中国向け輸出の減退に加え、22年に発生した豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)による産子数の減少と23年3月から同国政府が実施しているアニマルウェルフェア規制の厳格化の影響(注2)としている。
 
(注2)海外情報「スペイン豚肉生産、アニマルウェルフェア規制の厳格化などで減少見込み(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003607.html)を参照されたい。
 

 
23年10月の枝肉価格、3カ月連続で前月を下回る
 欧州委員会によると、2023年10月の豚枝肉卸売価格(EU27カ国)は、前年同月比7.5%高の100キログラム当たり217.91ユーロ(3万5522円:1ユーロ=163.01円(注3))となった(図2)。同価格は引き続き前年を上回っているが、前月比4.6%安となり、8月から3カ月連続での下落となった。また、週別の価格動向を見ると、7月中旬以降から18週連続で前週を下回っている。ただし、下落幅は落ち着きを見せており、11月6日の週別価格は、前週から0.02ユーロ(3円)の下落にとどまった。一方、現地報道によると、年末にかけて小売需要の一定の増加が見込まれるが、多くの加盟国で引き続き需給が緩和していることもあり、価格は下落基調で推移するとされている。
 
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年11月末TTS相場。
 

 
23年9月の豚肉輸出量、引き続きアジアを中心に大幅に減少
 欧州委員会によると、2023年9月のEU域外への豚肉輸出量(EU27カ国)は、16万1856トン(前年同月比34.5%減)と大幅に減少した(表2)。23年1〜9月の累計では、英国を除くすべての主要輸出先が大幅に減少している。この要因について、同委員会が10月9日に公表した農畜産物の短期的需給見通しによると、中国での豚肉生産の回復やEU域内での需要増に加えて、前述の通りEU産豚枝肉価格が高値で推移していることにより、米国、日本、豪州向けの高価格品やフィリピン向けの低価格品でも輸出量が低下しているためとしている。
 一方、同期間の英国向け輸出量は、25万8255トン(前年同期比11.2%増)とかなり大きく増加した。英国農業園芸開発委員会(AHDB)によると、外食を通じた英国の豚肉消費量は年々増加しており、英国産に比べEU産の価格が低いことも輸出量が増加している要因としている。

 
(調査情報部 藤岡 洋太)