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海外需給【豚肉/ブラジル】畜産の情報 2024年1月号

23年1〜 10月の豚肉輸出量は増加傾向で推移

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23年の豚肉生産量は増加傾向を継続して推移
 ブラジル地理統計院(IBGE)によると、2023年1〜6月の豚肉生産量は261万2000トン(前年同期比1.7%増)と前年同期をわずかに上回った(図1)。同国の豚肉生産量は22年まで9年連続で増加しており、23年も国内外からの堅調な需要により増産傾向は継続している。
 ブラジル農牧省(MAPA)が23年1月に公表した22〜32年の豚肉長期需給予測では、この間(10年間)に同国の豚肉生産量は年平均2.4%増加すると見込んでいる。

 
23年10月の生体豚価格(肥育豚)は前年同月比6.3%安
 サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、2023年10月のブラジルの生体豚価格(肥育豚、パラナ州)は、1キログラム当たり6.27レアル(188円:1レアル=30.00円(注)前年同月比6.3%安)となった(図2)。これは、飼料穀物の豊作により価格が下落し、豚肉生産コストが低下したことなどが背景にあるとみられる。
 近年の価格動向を見ると、22年1月から上昇傾向で推移し、23年2月には同7.02レアル(211円)となり、20年11月以来の同7レアルを超える高値となった。これは、コロナ禍からの経済回復による供給網の混乱や人手不足の状況に加え、ウクライナ情勢などを背景とした飼料穀物やエネルギー価格の高騰により生産コストが上昇したことなどが要因である。このため、独立系を中心とした中小規模の養豚農家では、生産コストの増加分を吸収できずに収益性が悪化し、経営難に陥るケースも見られた。
 現地報道によると、最近の養豚農家の収益性は、豚肉生産コストが低下したことから、これまでの厳しい状況から回復したとされている。
 
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年11月末TTS相場および現地参考為替相場(Selling)。

 
23年1〜10月の豚肉輸出量、中国向けの落ち込みをその他の輸出先向けで補完
 ブラジル開発商工サービス省貿易局(SECEX)によると、2023年1〜10月の豚肉輸出量は90万916トン(前年同期比7.7%増)と前年同期をかなりの程度上回った(表)。近年の同国の豚肉輸出量は、アジアや欧州などで発生したアフリカ豚熱の影響で中国向けを中心に大幅に増加し、22年は前年並みにとどまったものの2年連続で100万トンを超えている。
 輸出先別に見ると、最大の輸出先であり輸出量全体の35%を占める中国向けは31万9566トン(同7.3%減)と前年同期をかなりの程度下回った。月別の輸出量を見ると、中国国内での豚肉需給の緩和を背景に8月以降は月2万トン台に減少しており、いずれも前年同月を大幅に下回った。一方、香港、フィリピン、チリといったその他の主要輸出先向けは大幅に増加し、中国向けの落ち込みを補完している。特に22年11月にインフレ対策としてブラジルからの豚肉輸入を解禁したメキシコ向けは、2万2793トンと大きく増加している。メキシコは、中国、日本に次ぐ世界第3位の豚肉輸入国であり、米国産を中心に豚肉を輸入している。ブラジルからの豚肉輸入は現在、口蹄疫ワクチン非接種清浄地域であるブラジル南部サンタカタリーナ州からのみ認めている状況にあるが、将来的には輸入対象地域拡大の可能性もあるとみられる。

 
(調査情報部 井田 俊二)