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海外需給【牛乳・乳製品/EU】畜産の情報 2024年1月号 

9月の生乳出荷量は前年同月を下回り、乳価は前月並み

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23年9月の生乳出荷量、13カ月ぶりに前年同月を下回る
 欧州委員会によると、2023年9月の生乳出荷量(EU27カ国)は、1140万9000トン(前年同月比1.0%減)と13カ月ぶりに前年同月を下回った(表)。
  主要生産国別に見ると、ドイツ(同0.2%増)およびポーランド(同1.5%増)は前年同月を上回った。一方、フランス(同4.8%減)、オランダ(同1.2%減)、イタリア(同3.3%減)およびアイルランド(同1.9%減)はいずれも前年同月を下回った。中でもオランダは16カ月ぶりに前年同月を下回っており、現地報道によると、同国で発生したブルータング(注1)の影響が、生乳出荷量の減少の一因とされている。
 四半期別の生乳出荷量を見ると、第1四半期(1〜3月)は、高水準となった生乳取引価格を背景に前年同期をわずかに上回り(前年同期比1.0%増)、第2四半期(4〜6月)も欧州南部は酷暑となったが北部が比較的涼しく降雨もあり牧草の生育が良好となったことで、前年同期をわずかに上回った(同0.6%増、図1)。第3四半期(7〜9月)は、生乳取引価格が前年同期を大幅に下回ったことや、生産コストが依然として高止まりにあったことで前年同期並み(同0.2%減)となった。
 
(注1)牛、羊、ヤギなどの反すう動物で発生するウイルス性の感染症。ウイルスは吸血昆虫によって媒介され、接触感染はない。感染すると、発熱、目やにや鼻水の漏水、口および鼻腔内に潰瘍かいようができるなどの症状がある。乳牛への感染により、泌乳量が減少するという。
 




 
23年9月の生乳取引価格、5カ月連続で前年同月を下回る
 欧州委員会によると、2023年9月の生乳取引価格(EU27カ国の平均)は、100キログラム当たり43.45ユーロ(7083円:1ユーロ=163.01円(注2)、前年同月比20.3%安)と前年同月を大幅に下回った(図2)。生乳取引価格は23年当初から9カ月連続で下落しているが、下落幅は縮小しており、9月は前月比0.2%安と前月並みとなった。
 
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年11月末TTS相場。

 
主要乳製品価格は前年同月比大幅安も、バター価格は上昇
 欧州委員会によると、2023年11月26日の週の100キログラム当たり乳製品価格(EU27カ国の平均)は、バターが528ユーロ(8万6069円、前年同期比17.1%安)、脱脂粉乳が261ユーロ(4万2546円、同16.2%安)、全粉乳が360ユーロ(5万8684円、同18.9%安)、チーズが347ユーロ(5万6564円、同26.3%安)、ホエイパウダーが84ユーロ(1万3693円、同12.5%安)と、すべての品目で前年同期を大幅にもしくはかなり大きく下回った(図3)。しかしながら、23年10月以降、バター価格は前週を上回って推移し、11月26日の週は前月最終週比8.2%高となった。米国農務省農業マーケティング局(USDA/AMS)によると、バターの原料となるクリームの需要が高く供給量が限られることで、乳業各社がバターの生産を抑制していることが要因とみており、年末需要に向けて各社の在庫量も徐々に減少しているとされている。

 
(調査情報部 渡辺 淳一)