国産トウモロコシ価格、増産に伴う供給増から弱含みでの推移と予想
中国農業農村部は2023年11月24日、「農産物需給動向分析月報(2023年10月)」を公表した。この中で、同年10月の国産トウモロコシ価格は前月比2.0%安となり、増産が伝えられる中で下落に転じている(図1)。同月の国内のトウモロコシ需給を見ると、供給面では今年の増産が確実となり、主産地の気温も例年より高く新穀の貯蔵に適していないことから、生産者の出荷意欲が増しているとされている。一方、需要面では飼料やエタノール、コーンスターチ(でん粉)業界からの需要はあるものの、いずれの業界も経営改善を進める中で、在庫を抱えず必要量のみを調達している状況とされている。このため、需給は緩和傾向にあり、国産トウモロコシ価格は短期的には弱含みでの推移が見込まれている。
各地の価格動向を見ると、主要養豚生産地である中国南部向け飼料原料集積地となる広東省黄埔港到着の輸入トウモロコシ価格(関税割当数量内:1%の関税+25%の追加関税)は、23年10月が1キログラム当たり2.26元(47円:1元=20.90円(注))となった。また、国産と輸入との価格差は、同月の国産トウモロコシ価格(東北部産の同港到着価格)が同2.90元(61円)となったことで先月の同0.68元(14円)から同0.64元(13円)に縮小した。
国産大豆価格、需要拡大の期待から安定・強含みでの推移と予想
2023年10月の国産大豆価格は、安定した生産が伝えられる中で前月比0.3%安となった(図2)。同月の国内の大豆需給を見ると、供給面では新穀の市場供給量が増加し、また、品質も前年から大幅に向上しているとされている。需要面では食用油や大豆製品の需要が安定しているものの、市場への供給増を見据え、取引業者は必要量のみを購入している状況とされる。一方で、備蓄在庫の購入も開始されており、年末にかけて消費需要の拡大も期待されることで、国産大豆価格は短期的には安定または強含みでの推移が見込まれている。
各地の価格動向を見ると、主産地である黒竜江省の食用向け国産大豆平均取引価格は、23年10月が1キログラム当たり4.94元(103円、前年同月比16.5%安)と前年同月を大幅に下回った。また、大豆の国内指標価格の一つとなる山東省の国産大豆価格は、同5.72元(120円、同11.8%安)とかなり大きく下回った。輸入大豆価格が下落したことから、国産大豆と輸入大豆の価格差は、同1.14元(24円)と前月から拡大した。
なお、今回の公表では、2022年10月以降の輸入大豆の価格が修正されている。
国際相場に影響する大豆の輸入量については、前年に比べて高い水準で推移している。23年(1〜9月)の輸入量は7780万トン(前年同期比14.4%増)、輸入額は同3.7%増の475億700万米ドル(7兆344億円:1米ドル=148.07円(注))と報告されている。主な輸入先はブラジル(総輸入量の70.8%)、米国(同24.3%)である。5月以降、搾油需要の増加に伴い輸入量は増加しており、国内の大豆および大豆かす在庫量は十分にあるとされている。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年11月末TTS相場。
(調査情報部 横田 徹)