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海外需給【牛肉/ブラジル】畜産の情報 2024年2月号

2023年の肥育牛価格は前年を下回る水準で推移

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23年1〜9月の牛と畜頭数は経産牛を中心に増加
 ブラジル地理統計院(IBGE)が四半期ごとに公表する資料によると、2023年1〜9月の牛と畜頭数は2484万3000頭(前年同期比10.9%増)、牛肉生産量は650万5000トン(同8.9%増)といずれも前年同期をかなりの程度上回った(図1)。これは、生体牛価格が下落傾向で推移する中、肉用牛生産者が繁殖用雌牛を中心にと畜向け出荷を増加させる傾向が強まったためである。23年の牛と畜頭数は増加傾向で推移しており、直近四半期(7〜9月)では同12.2%増と1997年に統計を取り始めてから最多となった。これを種類別に見ると、雄牛が同5.5%増となる一方、経産牛は同24.6%増と大幅に増加した。
 近年の状況を見ると、2020、21年のと畜頭数はいずれも前年を下回った。これは、19〜22年に子牛価格が上昇したことで、繁殖農家が増頭のため繁殖雌牛を保留したためとみられる。22年は、牛肉価格が高水準で推移したことから3年ぶりに増加した。

 
23年1〜11月の牛肉輸出量は前年同期をわずかに下回る
 ブラジル商工サービス省貿易局(SECEX)によると、2023年1〜11月の牛肉輸出量は、179万7466トン(前年同期比2.2%減)と高水準であった前年同期をわずかに下回った(表)。また、同期間の輸出単価は1トン当たり4755米ドル(67万9157円:1米ドル=142.83円(注)、同20.9%安)と大幅に低下した。
 輸出先別に見ると、輸出量全体の6割を占める中国向けは107万9471トン(同5.2%減)と前年同期をやや下回った。これは、2月にブラジル北部パラー州で非定型BSEに感染した牛が確認されたことで、同国向け輸出が1カ月間(2月23日〜3月22日)停止した影響が大きい。また、中国国内での牛肉需給の緩和を背景に、同国向け輸出単価が同26.3%安と大幅に低下したことも影響した。このほか、エジプト向けは同国でのインフレの進行から同33.8%減と大幅に減少した。一方、中国に次ぐ輸出先のチリ向けは、国内のインフレ圧力の緩和から同28.5%増と大幅に増加した。

 
23年末時点の肥育牛価格は前年同期比1割安
 サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、2023年12月28日時点の肥育牛価格は1キログラム当たり16.82レアル(496円:1レアル=29.50円(注)、前年同期比12.0%安)となった(図2)。23年の肥育牛価格は、と畜頭数増による牛肉の供給量の増加や、中国向け牛肉輸出の一時停止などから下落傾向で推移し、9月には20年5月以来の低水準となった。その後は、牛肉供給量の調整が進むとともに輸出が回復基調となったことから需給が好転し上昇に転じた。しかしながら、肥育牛価格は依然として前年同期を下回っており、肉用牛生産者の増頭意欲が高まっている状況にないとみられる。
 
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年12月末TTS相場および現地参考為替相場(Selling)。
 

 
(調査情報部 井田 俊二)