23年9月の豚肉生産量、16カ月連続で前年同月比減
欧州委員会によると、2023年9月の豚肉生産量(EU27カ国)は、164万トン(前年同月比7.3%減)とかなりの程度減少し、16カ月連続で前年同月を下回った(図1)。同月の1頭当たり枝肉重量は91.9キログラム(同0.1%増)と前年同月並みとなったが、と畜頭数が1783万頭(同7.4%減)とかなりの程度減少したことが影響した。EU域内で継続するアフリカ豚熱の発生に加え、アニマルウェルフェアや環境規制などの要因により、引き続き飼養頭数が減少していることから豚肉生産量の減少が続いている。欧州委員会が23年12月に公表した中期見通しによると、厳しい環境規制や輸出需要の減退により、EUの豚肉生産量は今後も減少傾向で推移すると見込まれている。
23年1〜9月の豚肉生産量を主要国別に見ると、生産量第1位のスペインは、前年同期比4.6%減の358万1700トンとなった(表1)。現地報道によると、国内の飼養頭数減少を受け、より高値で取引されるよう生産者が出荷を遅らせているため、1頭当たり枝肉重量は増加(9月は前年同月比2.0%増)しているとされる。
23年11月の豚枝肉卸売価格、4カ月連続で前月を下回る
欧州委員会によると、2023年11月の豚枝肉卸売価格(EU27カ国)は、前年同月比6.9%高の100キログラム当たり212.21ユーロ(3万3661円:1ユーロ=158.62円(注))となった(図2)。同価格は引き続き前年を上回っているが、前月比2.6%安となり、8月から4カ月連続で下落している。ただし、週別の価格動向を見ると、7月中旬以降から続いていた下落傾向はクリスマス需要などから11月に入り落ち着きを見せており、12月11日の週別価格は同211.84ユーロ(3万3602円)と、前週比0.96ユーロ(152円)安にとどまった。欧州委員会の中期見通しによると、短期的には飼料コストの低下による生産コストの下落から、豚枝肉卸売価格の一定程度の下落が予想されるものの、中長期的には生産コストの上昇とEU域内での供給ひっ迫により、同価格は高値で推移すると見込まれている。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年12月末TTS相場。
23年10月の豚肉輸出量、英国を除くすべての主要輸出先が大幅減
欧州委員会によると、2023年10月のEU域外への豚肉輸出量(EU27カ国)は、17万1304トン(前年同月比29.4%減)と大幅に減少した(表2)。23年1〜10月の累計においても前年同期比27.5%減と大幅に減少し、国別では、英国を除くすべての主要輸出先が大幅に減少した。欧州委員会によると、中国での豚肉生産の供給過多やEU産豚枝肉価格が高値で推移していることにより、アジア向けを中心に輸出量が低下していることを要因に挙げている。また、米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、最大の輸出先である中国での豚肉生産増による輸入減を受けて、EUでは輸出先の多様化を図っているものの、中国向け輸出量の減少分を補うことができていないとされる。
一方、同期間の英国向け輸出量は、29万57トン(同11.1%増)とかなり大きく増加した。英国農業園芸開発委員会(AHDB)によると、英国産に比べてEU産の豚肉価格が低いことから、英国への輸出量は引き続き増加傾向にあるとされている。
(調査情報部 藤岡 洋太)