23年10月末の繁殖雌豚頭数は減少も適切水準を上回る
中国農業農村部によると、2023年10月末時点の繁殖雌豚頭数は4210万頭(前年同月比3.9%減)と前年同月をやや下回った(図1)。同頭数は3月末以降、減少傾向にあるが、同月も農業農村部が適切な水準としている4100万頭程度を2.7%上回っている状況にある。
23年10月の豚と畜頭数、引き続き前年同月を上回る
2023年10月の豚と畜頭数は、2867万頭(前年同月比36.7%増)と前年同月を大幅に上回った(図2)。中国農業農村部によると、年明け2月の春節に向けて安定的な豚肉の供給を確保するため、と畜頭数の増加が続いているとされる。
23年11月の豚肉価格は引き続き安値で推移
豚肉価格は2023年10月から2カ月連続で下落しており、11月の豚肉価格は前月比4%安の1キログラム当たり25元(506円:1元=20.23円(注))となった(図3)。中国農業農村部によると、年末年始や春節の連休需要に向けて同国南部を中心とした春節向け加工肉製造が最盛期を迎え、一定の消費の回復は見られるものの、供給量が消費量を上回っているため、豚肉価格は下落傾向にあるとしている。また、肥育豚の頭数が十分なことから、この先数カ月の豚肉供給量の大幅な減少は想定し難いとし、当面、豚肉価格が上昇する可能性は低いとしている。現地報道によると、豚肉価格の低迷による養豚企業の収益性悪化から、繁殖雌豚のと畜向け出荷が進んでいることも供給過剰の一因とされている。
また、11月の子豚価格は、同11.9%安の同24.2元(490円)となった。現地報道によると、豚肉の供給過剰による豚肉価格の低迷により、生産者の子豚導入意欲は乏しいとされている。
このように豚肉価格の低迷が続く中で、中国国家発展改革委員会は11月29日、23年第3回目となる豚肉の国家備蓄による買い付け(対象数量1万トン)を実施した。しかし、今回は対象数量が限られたこともあり、その後の豚肉価格に大きな変動は見られていない。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年12月末TTS相場。
23年1〜11月の豚肉輸入量は前年同期を下回る
2023年1〜11月の豚肉輸入量は、145万190トン(前年同期比6.1%減)と前年同期をかなりの程度下回った(表)。特に10、11月の輸入量は前年の5〜6割の水準に落ち込んでいる。現地報道によると、国内豚肉価格が安値で推移していることで大量の冷凍豚肉在庫を抱えているため、輸入品の価格優位性が低下していることが要因とされている。一部の養豚・加工企業の中には、従来、輸入豚肉を用いてきた加工製品の原料を国産豚肉に切り替えるなど、厳しい販売環境の中で在庫負担を軽減する動きも出てきているとされている。繁殖雌豚頭数が一定水準を超過する状況が続く中で、今後の在庫の推移や価格の動向、国家備蓄の取り組みなどが注目されている。
(調査情報部 海老沼 一出)