畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 23年の豚肉輸出量は3年ぶりに増加の見込み

海外需給【豚肉/チリ】畜産の情報 2024年3月号

23年の豚肉輸出量は3年ぶりに増加の見込み

印刷ページ
23年の豚肉生産量は前年同期をわずかに上回る水準で推移
 チリ農業省農業政策・調査局(ODEPA)によると、2023年1〜11月の豚肉生産量は、53万7049トン(前年同期比1.8%増)と前年同期をわずかに上回った(図1)。と畜頭数が6月以降回復基調(同0.8%増)で推移するとともに、1頭当たり平均枝肉重量(注1)が106.6キログラム(同1.0%増)と増加した。23年は、前年に比べて飼料穀物価格が低下し、米ドルに対するチリペソ安が落ち着いたことから豚肉生産の回復につながったとみられる。
 
(注1)枝肉重量には頭部と皮が含まれる。
 
 
23年1〜11月の豚肉輸出量は前年同期比14.9%増
 2023年1〜11月の豚肉輸出量は、18万6895トン(前年同期比14.9%増)と前年同期をかなり大きく上回った(図2)。これは、最大の輸出先である中国向け(同15.5%増)が、22年の大幅な落ち込み(21年比4割減)から回復に転じたことや、これに次ぐ日本向けが大幅に増加(前年同期比26.3%増)したことが寄与した。ただし、中国向けは、同国における豚肉需給の緩和や不透明な経済状況を反映し、コロナ禍での規制解除後も大きく回復していない。これ以外では、コスタリカやペルーなどの中南米、オランダ、フィリピン向けが大幅に増加した。
 チリは23年2月21日、発効した環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)の10番目の締結国となったことで、同国の食肉団体は、豚肉輸出の拡大につながるものと期待している。

 
23年の肉豚生産者販売価格は前年を上回る水準で推移
 2023年12月の肉豚生産者販売価格は、前年同月比28.9%高の1キログラム当たり1.47米ドル(218円:1米ドル=148.55円(注2))と大幅に上昇した(図3)。22年の肉豚生産者販売価格は、国内経済の減速による豚肉需要の低迷や中国向け豚肉輸出の大幅な減少により一昨年の高値から4割程度下落したが、23年は海外需要の増加に伴い前年を上回って推移している。
 肉豚生産者の収益性を見ると、22年は肉豚生産者販売価格が大幅に下落する一方で、ウクライナ情勢、天候不順などによる飼料穀物価格の上昇や世界的なインフレ圧力の増大により生産コストが上昇し、豚肉生産者にとって厳しい経営環境となった。23年は、肉豚生産者販売価格の上昇に加え、飼料穀物価格が低下傾向で推移したため、肉豚生産者の経営環境が改善に向かい、豚肉生産量の増加につながったとみられている。
 
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」2024年1月末TTS相場。

 
(調査情報部 井田 俊二)