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海外需給【豚肉/EU】畜産の情報 2024年4月号

豚肉生産量の減少が続き、枝肉価格は高値を維持

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23年11月の豚肉生産量、減少傾向は変わらず
 欧州委員会によると、2023年11月の豚肉生産量(EU27カ国)は、185万トン(前年同月比3.9%減)とやや減少し、22年6月から18カ月連続で前年同月を下回った(図1)。同月の1頭当たり枝肉重量は94.6キログラム(同1.4%増)とわずかに増加したが、と畜頭数が1952万頭(同5.3%減)とやや減少したことが影響した。欧州委員会が23年12月に公表した中期見通しによると、厳しい環境規制や輸出需要の減退により、EUの豚肉生産量は今後も減少傾向で推移すると見込まれている。
 23年11月の生産量を主要生産国別に見ると、生体輸入や母豚数が増加しているポーランド(同3.9%増)、アフリカ豚熱(ASF)発生の影響から回復基調にあるイタリア(同8.8%増)は、いずれも前年同月を上回った(表1)。一方で、スペイン(同3.7%減)やドイツ(同1.8%減)などの多くの国が前年同月を下回ったことにより、全体としては減産になった。
 




 
24年1月の豚枝肉卸売価格、高値が続く
 欧州委員会によると、2024年1月の豚枝肉卸売価格(EU27カ国)は、前年同月比1.3%高の100キログラム当たり205.37ユーロ(3万3835円:1ユーロ=164.75円(注))となった(図2)。同価格は21年11月から前年同月を上回って推移しており、豚肉生産量の減少を背景に歴史的な高値が継続している。週別の価格動向を見ると、23年12月から1月にかけて下落したものの、2月に入り在庫の減少から上昇に転じ、直近2月12日の週は前週から4.84ユーロ(797円)高の同208.08ユーロ(3万4281円)となった。欧州委員会の中期見通しによると、生産コストの上昇とEU域内での供給ひっ迫により、24年の同価格は高値での推移が見込まれている。
 
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年2月末TTS相場。
 

 
23年の豚肉輸出量、アジア向けを中心に大幅減
 欧州委員会によると、2023年12月のEU域外への豚肉輸出量(EU27カ国)は、17万7909トン(前年同月比22.5%減)と大幅に減少した(表2)。また、23年累計(1〜12月)でも前年比27.3%減と大幅に減少し、英国を除くすべての主要輸出先で大きく減少した。現地報道によると、ASFの発生や、環境規制の実施による域内生産量の減少に伴う価格競争力の低下により、アジア諸国向けを中心に輸出量が減少したとされている。一方、同年の英国向け輸出量は34万7047トン(同10.6%増)とかなりの程度増加した。英国農業園芸開発委員会(AHDB)によると、23年の英国の豚肉生産量は過去5年で最も少なく、国内の豚肉需要が高まる中で、より安価なEU産への需要が高まったためとされている。
 欧州委員会の中期見通しによると、EU域外への豚肉輸出量については、これらの複合的な要因により、今後数年間は減少すると予測されている。
 

 
(調査情報部 藤岡 洋太)