23年12月末の繁殖雌豚頭数、減少により適切な水準に近づく
中国農業農村部によると、2023年12月末時点の繁殖雌豚頭数は4142万頭(前年同月比5.7%減)と前年同月をやや下回った(図1)。同頭数は同年3月末以降減少傾向にあり、中国農業農村部が最適な飼養規模としている4100万頭に近づいた(注1)。
23年12月の豚と畜頭数、引き続き前年同月を大幅に上回る
2023年12月の豚と畜頭数は、3978万頭(前年同月比28.7%増)と前年同月を大幅に上回った(図2)。中国農業農村部によると、飼養規模が過大となる中で、多くの生産者が24年2月の春節需要に向けて安定的な豚肉の供給を確保できるように肥育スケジュールを組み、年末に向けて出荷したことが要因とされている。
また、23年の豚肉生産量は、と畜頭数が前年を上回って推移したことで、5794万トン(前年比4.6%増)と前年をやや上回った。
24年1月の豚肉価格は引き続き安値で推移
2024年1月の豚肉価格は、23年末のと畜頭数増加による豚肉供給量の増加から前月比1.2%安の1キログラム当たり24.4元(517円:1元=21.18円(注2))となった(図3)。今後の豚肉価格について中国農業農村部は、繁殖雌豚頭数が適切な水準を上回る中で豚肉の供給能力は十分であり、また、国内の豚肉在庫量も前年を上回る水準にあること、さらに、春節後の需要の一服感から、さらなる下落が見込まれている。一方で、現地関係者によると、大規模生産者からは24年の豚肉市場を楽観視する声も出ているとされる。これは、春節後の短期的な価格の下落は想定しつつも、繁殖母豚頭数の継続的な減少から24年の豚肉生産量は前年を下回り、需給が締まることを期待することによる。
また、24年1月の子豚価格は、同0.2%安の同23.2元(491円)となった。中国農業農村部によると、1月前半の子豚価格は下落傾向にあったが、24年の第3四半期(7〜9月)以降の豚肉需給状況の回復に期待する大規模生産者が、子豚の自家保留を進め、出荷を絞る動きがあったことを受けて、1月後半の子豚価格は反発したとされている。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年2月末TTS相場。
23年の豚肉輸入量は前年を下回る
2023年の豚肉輸入量は154万627トン(前年比11.6%減)と前年をかなり大きく下回った(表)。中でも、アフリカ豚熱の発生に起因した中国の輸入需要で20〜21年にかけて大きく伸ばしたEUは、供給減などにより減少が顕著となった。23年当初は、22年末の豚肉価格の高騰により輸入量が前年を上回る状況が続いたが、と畜頭数や豚肉生産量の増加に伴って輸入量は次第に減少し、11月と12月は前年の輸入量の約5割の水準にまで落ち込んだ。
(調査情報部 海老沼 一出)