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海外需給【鶏肉/ブラジル】畜産の情報 2024年4月号

23年の鶏肉生産量、堅調な海外需要を背景に過去最大の見込み

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23年1〜9月の鶏肉生産量は前年同期比6.1%増
 ブラジル地理統計院(IBGE)によると、2023年1〜9月の鶏肉生産量は1013万2000トン(前年同期比6.1%増)と前年同期をかなりの程度上回り、IBGEが統計を取り始めた1997年以降最大となった(図1)。これは、海外からの堅調な需要を背景として、生産者の増産意欲が継続したためとみられる。また、同期間の処理羽数は、47億5200万羽(同4.6%増)となった。
 近年の鶏肉生産量を見ると、2022年まで4年連続で増加している。サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、23年の鶏肉生産量は過去最大と見込まれており、24年についても海外からの堅調な需要を背景に増加基調での推移が予測されている。
 

 
23年の鶏肉輸出量は海外からの堅調な需要により前年比8.4%増
 ブラジル開発商工サービス省貿易局(SECEX)によると、2023年の鶏肉輸出量は473万2539トン(前年比8.4%増)と前年をかなりの程度上回った(表)。これは、米国など主要鶏肉生産国での高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の発生やウクライナ情勢などの影響で鶏肉流通量が減少し、ブラジル産鶏肉への需要が高まったためとみられる。
 輸出先別に見ると、最大の中国向けは68万2282トン(同26.4%増)と前年の落ち込みから大幅に回復した。これは、中国が米国のほかアルゼンチン、トルコ、チリなどに対しHPAIに関連した輸入規制を強化したことによるものである。このほか、中国と同様に鶏肉の輸入規制を強化した南アフリカ共和国向け(同19.9%増)やインフレ対策として一時的な輸入関税の無税を措置したメキシコ向け(同22.8%増)も前年を大幅に上回った。また、日本向け(同4.2%増)は、ブラジルでのHPAIの発生による一時的な輸出停止により、8〜10月の各月の輸出量が前年同月比で2割ほど減少したが、その後回復し前年をやや上回った。
 一方、総輸出額(同1.1%増)については、輸出単価が低下したため、前年をわずかに上回る水準にとどまった。
 

 
23年の鶏肉卸売価格は前年より1割程度低下
 CEPEAによると、直近(2024年2月23日時点)のブラジルの鶏肉卸売価格(サンパウロ州)は、1キログラム当たり7.40レアル(225円:1レアル=30.44円(注)、前年同期比3.9%高)となった(図2)。価格の推移を見ると、23年は国内での記録的な鶏肉生産量による鶏肉需給の緩和に加え、牛肉や豚肉との価格差の縮小による鶏肉の価格競争力低下から、4〜7月にかけて急落し、7月には同5.66レアル(172円)と高値時から3割程度下落した。その後は、鶏肉供給量の抑制などにより需給が改善したことで、価格は上昇に転じたが、年間では、高水準となった22年の価格を1割程度下回った。23年10月以降の同価格は、同7レアル台で推移している。
 
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年2月末のTTS相場および現地参考為替相場(Selling)。
 

 
(調査情報部 井田 俊二)